水素と酸素で飛ぶ飛行機

June 3, 2015
















Photo: gizmag 


 ボーイングでは水素と酸素で飛行機の推進力を得る研究が進んでいる。燃料電池の反応後に排出されるのは水。クリーンエネルギーの代表格の燃料電池モータープレーンはいつ頃に実用化されるのだろうか。


 世界一周飛行の途中で悪天候で日本に予定外の着陸をしたソーラーインパルス2は主翼一面に太陽電池パネルを貼り付けて、日中は太陽光発電を電力とするモーター推進。残った電力をリチウムイオンバッテリーに蓄電すれば、原理的には昼夜連続飛行が可能となる。


 最近は燃料電池飛行機、すなわち水素と酸素を燃料として発電してモーター推進の飛行機を開発する計画があいついでいる。日本でも経産省がIHIに航空機用燃料電池システムの開発を委託し、IHIはボーイング社と共同で実機(B737)にシステムを積み飛行条件で電力を供給し、補助電源(APU)を置き換える実証が済んでいる。




 一方、燃料電池による発電で推進力を得る研究もさかんで、シンガポールのホライゾン社では10kgまでの無人飛行機の長時間飛行記録を持っている。AEROPACという燃料電池システムは重量2kgのカートリッジ式で900Wの電力供給能力を有する。これにより小型のドローンは燃料電池化が可能となった。



Photo: Stanford Energy Club 


 航空機用燃料電池の開発で先端を行くドイツの開発グループではエネルギー効率を飛躍的に高めた。さらに革新的な提案もある。機体をカーボンファイバーで軽量化し、液体水素を燃料とした燃料電池システム航空機ではエネルギー効率が90%以上に達するという。

 

 通常の燃料を燃焼して推進力とする飛行機は40%どまり。例えばボーイングB737-800が巡行するのに要するエネルギーは11MW、8,400軒の住宅の消費電力に相当する。図のようなカーボンファイバーの旅客機はゼロエミッションで飛ぶ。

 

 CO2は排出されないが水が蒸気となればCO2同様に温室ガスなので、排出される水蒸気の影響を評価することや、カーボンファイバーのメンテや劣化が対策など解決するべき問題も多いが、空のFCVといえる燃料電池航空機は旅客機の未来をイメージさせる。