対テロ戦争の一環として、米国時間の8月17日(日曜日)の午後7時から、テロを想定したFBI主導の演習が行われると15日に突然発表があった。不可思議なのは、その場所である。インディアナ州グリーンウッドのグリーンウッド・パーク・モールで、”INDYMALLEX”と称したテロ対策演習を行うのだ。
アルカイーダのウサマ・ビン・ラディンが2011年に死亡してから、新たなテロ組織ISISの脅威が出現した。アルカイーダはアフガンの対ソ連戦争で、ISISは、シリアのアサド政権を転覆する目的でアメリカが支援してきたテロ組織である。イラク北部とシリア北部を制圧、勢力を拡大しているなか、アメリカ本国でのテロ攻撃も示唆していると米国政府は警告する。
だが、アメリカ国民は911事件以降から続いているテロの脅威に対して、精神的な疲れとアメリカ政府がテロ組織を国益のために支援してきたことが明らかになるにつれて、対テロ戦争に対する認識が変わりつつある。最近の世論調査(ギャラップ)によると、オバマ政権の支持率は過去最低の39%で、議会は歴史上最低の7%と国民の信頼を完全に失っている。
合同演習の参加組織
今回の合同演習は、以下の政府機関が参加、500人規模の演習が予定されている。
FBI
SWAT
インデイアナ州消防隊、インデイアナポリス消防隊
モール所有企業のサイモン・プロパティ・グループ
インディアナ州立警察
インディアナポリス国土安全保障
インディアナポリス警視庁
グリンウード警察
インディアナポリス緊急医療隊
ジョンソン群保安官事務所
医師会病院緊急ヘリ部隊
なぜショッピングモールなのか
今回の合同演習があるショッピング・モールの所有と運営会社はサイモン・プロパティ・グループで、米国最大の商業不動産会社である。日本にも、9つのプレミアム・アウトレットを三菱地所との合弁で所有、運営している。なぜ、これほどの規模の演習を行う必要があるのかが疑問であるが、テロ集団が次のターゲットとして、警備も少なく人間の密集度の大きいショッピングモールを選んだのではないか。
一年前の9月21日、ケニア首都ナイロビアにある高級ショッピング・モール、ウェストゲートがソマリアのイスラム過激派「アルシャバブ」の武装集団により襲撃された事件を思い出す。犯人たちは人質をとって立てこもり、犯行理由について、「アメリカ人とユダヤ人の店だから」と声明をだした。
死者72人と200人以上の負復者をだした、ウェストゲート・モールはイスラエル系の会社で、運営、モール警備を管理していた会社もイスラエル系であった。ちなみに全米最大級のショッピングモールのモール・オブ・アメリカの所有、運営している会社もユダヤ系である。
次のテロはどこで
今回の演習をきっかけに、全米のモールでも演習が実施される予定がある。テロ対応策を行っても、テロは防げない。ショッピングモールは買い物に夢中になり、油断しがちな場所であるが、人間が密集する場所は他にも空港、駅、スタジアムなどきりがない。テロの根源を除かない限り、テロはつづくのではないか。米国が援助して育ったテロ組織が手に入れた武器で、いずれは牙をむくことになるからだ。