イスラム国に人員、武器、資金を提供するトルコ

28.11.2015

Photo: scoopnest


 ロシアのプーチン大統領は、主要20カ国・地域(G20)首脳会議後の記者会見で、「イスラム国」に資金提供している40カ国の中に、G20の加盟国が含まれていると発言した。具体的な国名は特定しなかったが、シリア国境を持つトルコはイスラム国に人員、武器、資金を提供してきた。



戦闘員の供給

 イスラム国に参加している戦闘員のうち、約15,000~20,000人がイスタンブーのアタチュルク国際空港や地中海をフェリー経由でアダナに、トルコ経由でシリアとイラクに渡っているとされる。シリアのアサド政権を転覆するために、トルコはこれまでイスラム国を含む反アサド勢力を支援してきた。イスラム国に分裂する前には、アルカーイダ、アル・ヌズラ戦線、自由シリア軍を支援してきた。その中でも、戦闘員の供給には大きな役割を果たしてきた。野党党首のKemal Kilicdaroglu2014年に、イスタンブールにはイスラム国の事務所があり、戦闘員をリクルートする複数のウェブサイトや支援組織があることを指摘している。


 そのため、トルコは「聖戦への入り口」とも呼ばれている。欧米からイスラム国に参加する若者の主流ルートである。シリアとの国境に面しているハタイやガズィアンテプなどの都市は戦闘員の受け入れ体制が整っていることから、イスラム国に参加を希望する若者で賑わい、その経済効果は大きい。シリアに渡る前に訓練を受け、戦闘情報を入手、武器、弾薬や戦闘服、最新型のスマホなどが購入でき、シリアやイラクの戦闘地区に向かう人身密輸業者やバスも提供されている。トルコからシリアに渡りイスラム国に参加する外国人は、ほとんど問題なく行き来できるとされている。



 ハタイやガズィアンテプには戦闘員に治療を提供する病院もある。2014年の米ワシントン・ポストは、イスラム国の上級幹部や戦闘員がトルコの病院で治療を受けていることを報道している。トルコのSuzcukも、ガズィアンテプにある政府管理下にあるデニズリ病院をイスラム国戦闘員の医療病院と認定、イスラム国幹部の治療を行っていることや戦闘員の受け入れ体制が整っていることを報じている。


Source: TARPLEY.net

 

武器や弾薬の提供

 20149月に、バイデン副大統領はハーバード大学における講演会で、ISISの勢力の拡大はトルコ、UAEなどの湾岸諸国からの資金や武器の提供によるものだと述べたことで、湾岸諸国から批判の的となった。コメントは撤回されたが、2012年からトルコ、湾岸諸国、欧米が反アサド組織(これらの組織はイスラム国とも関連がある)を支援しているとする疑いが事実として確認された形となった。


 イスタンブールには、人員や武器の流れを管理するコマンドセンターがあり、そこにはトルコに持ち込まれたサウジアラビアやカタールからの武器・弾薬がトルコ諜報機関によって国境まで運ばれ、そこからトラックでシリアにいるイスラム国、アルカーイダ、アル・ヌズラ戦線、自由シリア軍などに提供されているとTimesが報じたのは2012年である。今日まで提供してきた主流武器のなかには、カラシニコフ・ライフル、BKC機関銃、手榴弾、RPG7(イスラム国の動画で最も多く写っている武器の種類)などが含まれている。


 

原油密輸による資金

 イスラム国の主な資金源となっているのが、シリアでイスラム国が統制している石油プラントから密輸した原油の売買である。トルコ政府当局者やエルドアン大統領の息子が経営するBMZ社を含む仲買業者はイスラム国から大幅な割引価格で原油を購入、トルコ国内、フランスやドイツなどの欧州市場、アジア市場に輸出している。

 

ブレント取引価格の約半額で購入、2014年には、イスラム国はトルコの仲買業者との間で8億ドル以上の原油取引が行われ、トルコの仲買業者は1日あたり100万ドルの収益を上げたと推測されている。

 

イスラム国への武器供給ルートを断ち切ることが中東の安全保障とテロ撲滅の鍵となることは明らかであるが、支援することで利益を得ようとする周辺国の利害関係が根底にあることを認識しなければならない。