デンマークの移民財産没収法

23.12.2015

Source: PBS NEWSHOUR

 

 デンマークでは13日に、Soren Pind法務移民大臣が提出した移民に関して波紋を呼んでいる法案13日に成立した。それは、「移民への社会保証を含む支援に必要な資金を移民に負担してもらう法案」である。具体的にいえば、結婚指輪、婚約指輪、時計や携帯電話を除く300ユーロ以上の価値がある貴重品が没収の対象となる。

 

 

デンマークの移民数の増加

 デンマークに入植を希望する移民は年々増加傾向にある。2013年に7,557 人であった移民の数は2014年には14,815人まで増加、2015年はそれをはるかに上回る勢いである。隣国のスウェーデン、ノルウェー、オランダなどの社会福祉国家と同様に、デンマークは移民保護制度の負担による財政破綻の危機を迎えている。ロイターによれば国連難民高等弁務事務所と国際移住機関の調べでは2015年に欧州に流入した難民と移民が100万人を超えた。

 

 

市民財産の没収 

 米国では、市民財産の没収(Civil Asset Forfeiture)と呼ばれる制度があり、政府が正当な法的手続きなしで個人の資産を没収できる。今回デンマークでは、その制度を移民政策の一部とした法整備で、全ての移民に適応する。

 

 移民はまず武装した国境警備隊により、所有する宝石類、金貨を含む金商品、ダイアモンド原石、高級腕時計など高額貴重品とみなすものを没収される。法案は交通機関当局による没収にも適用される。全ての公共交通機関を使用する際に、移民は入国手続き終了書類を提示しなければならない。書類がない場合、持ち物検査や罰金1,700ユーロが課せられる。

 

 高額商品を没収される方法は、社会福祉国家とはいえ、民主主義的な国がとる政策として波紋を呼ぶものである。没収した高額商品は、移民に支給される様々な社会保証の資金として使われると政府は正当化している。それは、預金保険制度を維持するために、預金者の預金の一部を没収するのと同じ論理と考えられる。

 

 

ドイツ離脱税

 今回のデンマークの「移民財産の没収」法で、84年前のドイツの「離脱税」(Reichsfluchtsteuer)法が思い浮かぶ。第1次世界大戦後に課せられた巨額の賠償金、ハイパーインフレ、世界恐慌などで財政が悪化、政府は資金源を求めて「離脱税」制度を導入した。

 

 預金を持って、ドイツ国外に出るのを阻止するための一種の資本規制であった。国外に出る一定以上の資産を持つドイツ人は25%の「裕福税」が課せられた。驚くべきことは、これにより6年間で国の税収が350倍にも増加したことである。歴史的にみても、これほどの税収増加率はないほどの効果があったとされる。

 

 

パスポートを無効に

 

 米国では12月に、5万ドル以上の税金滞納者に対して、パスポートを無効とする制度が導入された。対象となるのが、1,240万人で、滞納額に加え利息や罰金を含むと総額1,310億ドルの税収となる。国税庁、財務省と国防省が連携して滞納者の追跡を行うことになる。長期外国に滞在または二重国籍があるアメリカ国籍の人が多く含まれているとされる。