Source: popsugar.com
金利の値上げに踏み切った理由は(雇用統計でみた)米国景気の好調さにあるとされる。しかし底辺をみれば現実は逆で、2015年のホームレスは1.6倍に増加している。この矛盾は雇用統計の数字が現実を反映していない証拠ともいえる。豊かで貧困な社会すなわち格差は拡大する一方なのだ。
米国市長会議が取り上げた緊急課題
米国の大都市はそのためホームレス用避難所と食料の確保に苦労しているが、増大するホームレスに対応しきれないでいることが米国市長会議で明らかにされた。
ロサンゼルス、ワシントン、シアトルなど人口密度の高い大都市では、路上生活者が増大しているが、中でも黒人の多いワシントンは最悪の状況にある。2015年の1年間でワシントンのホームレス人口は28%、住所不定の家族は60%増加したため、支援食料需要が27%増加。調査によれば、シカゴ、 サンフランシスコ、フイラデルフイアを含む22の大都市でホームレス全体の増加は1.6%であるのに対し、2015年の増加が3%となった。
これまでの市長会議では賃金の低下や物価の上昇など都市部に特徴的な問題が議題となったが、今回はストリート生活を送る人たちの増加と食料支援が話題となった。この状況を反映して昨年は全米のデモの賃上げと貧困をなけすことを訴えるものであった。
統計が示す現実:路上生活者の増大
2015年にニューヨーク、マサチューセッツ、ロサンゼルスと11の大都市の最低賃金が記録的な15ドルの低水準となった(National Employment Law Project)。政府の食料支援予算の大幅な削減で米国の飢えに苦しむ人口は大恐慌の1930年代以来の数字となった。
ニューヨークの路上生活者は60,000人でそのうち23,000人は幼児である(Coalition for the Homeless)。避難所運営に年間4200万ドル(日本円にして約50億円)があてられている。市当局によれば州予算は6900万ドル(83億円)でしかない。
ロサンゼルス、ハワイ、ポートランド、オレゴンは増加し続けるホームレス対策に食料と避難生活、住宅購入を保障するために州緊急事態を宣言した。全米の統計では貧困者総数が460万人、およそ6人に1人の率である。ロサンゼルスでは1カ月に13,000人がホームレスとなっている。「好調な米国経済」というメデイアの報道に反して、増大する貧困と路上生活者という現実にどのように対処するのか、いま米国政府にレッドカードが突きつけられようとしている。
国連出席でニューヨークを訪れる貧困国代表が街に溢れる路上生活者をみて「自国より貧困である」という印象を持ったという。格差という光と影の社会の一端は昔からあったとはいえ、度を越して影の部分が増えているのだ。