日経平均株価は9日に5.4%下落に続き、10日に2.3%、12日に4.8%下げた。2008年のリーマンショック後の最高値から28.23%下げている。債券市場では、10年国債の利回りはG7国では初めてマイナス0.035%まで低下、新発5年国債もマイナス0.260%と過去最低水準をつけた。日本経済は景気後退期に入っているにも関わらず、為替は円高に向かっている。
日本の公的債務状況からみても、なぜ円安ではなく、円高なのかと思う人は多い。なぜなら、政府債務残高のGDP比率は260%に登り、企業債務を含めると、GDP比率は390%以上に膨らむ債務国であるからである。それでも、2月1日に1ドル121円であったのが8.3%の急速な円高の110.90円となり、10日には為替安定をはかるため、日銀は為替介入をしたと推測される。
そもそも、日銀の金融政策は2001年から、低金利からゼロ金利、量的金融緩和でインフレ誘導、円安、株高誘導で、デフレ脱却と景気刺激が目的であった。今週の株安と円高で、日銀が一歩踏み込んで実施したマイナス金利政策は量的金融緩和策の効果の限界を示した。
円高がさらに進めば、為替介入が考えられるが、その効果も限定的になる可能性が高い。円と同じように安全資産であるスイスフランは2011年に、対ユーロで9%, 対ドルで7.8%, 対英ポンドで7.8%のフラン高となった。4ヶ月間、スイス国立銀行は1,500億ユーロ(約17.4兆円)を投入してフラン高を阻止しようとしたが、その効果も限定的であった。
注目される円の動向
世界の投資家が円の動向を注目するのは、円が金融システムにおける「ストレス度」を表しているからである。過去30年間、2007~2008年にかけてのアジア通貨危機や2008年のリーマンショックを含めて、全ての金融危機の前に急激な円高が起きている。
その理由は日本が債務国でありながら、24年間連続で世界最大の債権国であるからである。日本の対外純資産規模は2014年末の時点で366.9兆円、日本のGDPの約75%に匹敵する。一度グローバル金融市場に不安が広がると、対外投資は継続できず、資金が日本に戻って、キャリートレードを解消する動きとなる。そのため円買いが多くなり、急速な円高が起きる状況となる。
金融システムの崩壊危機
世界の株式の下落は連鎖的に起きている。中国経済の減速、原油価格の下落などによる強気相場の終わりと言われているが、それは今後起きるであろう、金融システムの崩壊危機の予兆と考えられる。これまでFRB, ECB、日銀など量的金融緩和でマネーを供給、株式市場に過剰流動性を生み、株価を押し上げ、過剰な投資は過剰な供給状態を作り上げた。
FRBによる量的金融緩和の終了と金利の利上げにより、流動性は縮小、需要とはかけ離れた過剰な供給によるデフレ、債務バブルと言った量的金融緩和の副作用が残った。このためこれまでのバブルとは違う規模の金融システムの崩壊危機が起きる可能性は非常に高い。欧州銀行の破綻危機、下降傾向にある株式市場や円高圧力、中央銀行による金融政策の限界などは、その予兆とみられる。