原油過剰供給のインパクト

13.02.2016

Photo: Business Insider

 

世界は原油価格の下落の渦に飲み込まれている。価格の下落は過剰供給が止まない限り続く。過剰な原油は投資家の不安を募らせ市場を冷え込ませた。原油価格の下落に伴い過去6か月の過剰生産量は半減したが、現在も100万バレルもの原油が市場では法外な安値で取引されている。

 

 

Source: The New York Times

 

このことはさらに過剰供給が続くことを意味している。貯蓄された過剰原油がはけて再び通常の生産が軌道に乗るのに数年を要するとみられる。この期間、石油関連企業と投資家は苦痛をしのぎ耐えるしかない。

 

原油価格の下落は株価にも鋭く影響し世界中で株価が20161月中旬から下降に転じた。投資家は中国の需要の減少とイランの原油増産を懸念したためである。シェールオイルで利益を上げた掘削業者も原油価格下落で共倒れすることを警戒する。

 

シェールオイルブームに乗ってここ2-3年は生産業者や有数の掘削州政府は強気で原油を増産しアジア、アフリカ、中南米の中産階級に供給した。値崩れが起こる前まではその恩恵を受け利益を得ていたが、ここにきて新興国の経済が冷え込み需要が減ると一気に供給過多となった。

 

 

市場へのインパクト

すでに1月中旬の時点で過去18カ月で原油価格は70%を超える下落を記録した。このことは世界の株式市場の不安を呼び株価の下落を引き起こしている。スタンダードアンドプアーズの株価指標は年明けに8%下落しているが、特に中国株は12月のピーク時から20%落ち込んだ。

 

エネルギー関連アナリストの見解では原油価格がバレルあたり30ドルを切れば市場への打撃が大きい。イランへの制裁解除に伴い原油増産に踏み切ったため、世界市場にさらに50万バレルの原油が流れ込む。またリビヤの原油輸出施設を巡る部族間の争いの調停の進展も新たな原油供給をもたらす。一方、サウジアラビア、クエート、イラクはアジア向けの原油生産を加速させている。

 

アメリカのシェールオイルリグ数は減少しメジャーの原油生産は減産に向かいつつあるため小規模の掘削企業が倒産している。しかしメキシコ湾の海洋油田などの大規模プロジェクトは生産縮小できないので、小規模な企業は赤字覚悟でシェールオイルを生産し続けなければならない。中東とシェールオイルの双方が原油過剰生産だが、最大の原因はシェールオイルの生産である。2008年から急激に増えたシェールオイルは1日あたり300万バレルが市場に供給されている。

 

 

機能しない生産調整

以前は原油生産が過剰になるとOPECが機能して生産調整を行ってきたが、シェールオイル起因の原油供給過剰では、市場を失うことを恐れて生産調整をしなかった。2015年の原油価格下落にもかかわらず生産を続けたため、2016年も1日あたり70万バレルが新たに市場に供給される。

 

2008年に中国の需要の伸びとアメリカ、メキシコの減産とベネズエラ、ナイジェリアの政治不安で供給減となり需給のバランスが崩れた際にバレルあたり150ドルを記録した。原油市場の需給バランスは敏感に動くので予期せぬ生産減あるいは需要増によって値崩れが解消される可能性はある。しかし現実は厳しかった。1カ月が経過した2月中旬にも価格下落は続き、世界的な株価の下落でその期待は裏切られた。