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地中海を越えて西アフリカからシリア内戦の影響で大量の難民が欧州に流れ込んでいる。シリアからの難民はトルコの港やキプロスを出港し、不法移民を運ぶ密航船でガリポリやイタリアコリアーノに入港する。
イタリア当局は3日、寒さと空腹に苦しんでいた乗客360人を船から救出した。中東やアフリカの人々が、紛争や貧困から逃れるために地中海を越えて、イタリアコリアーノの港に沈没寸前で到着した。
生命のリスクを掛けて欧州に渡る難民の数は増える一方で、年間10万人の大台を超えている。今後の数年で20-30万人という大量の移民を受け入れる余裕はもちろんEUにはない。イスラム圏から、ひとたびガリポリ上陸できれば、イタリアに渡ることは容易だし、基本的に欧州諸国間の行き来は容易である。
イタリアはこれまで沈没した難民の救助に積極的であったが、救助体制に変化があり、救助の遅れが多くの犠牲者につながり問題となっている。しかしそのイタリアは難民が増えて収容能力の限界に達した。基本的にはEUでは難民が最初に上陸した国が、移民申請や収容を引き受けることになっている。
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しかしイタリアの収容能力が限界になると、難民たちはドイツに向かう。欧州でずば抜けて経済大国であるドイツに向かうのは自然だが、難民の急増は社会問題となる。ドイツ政府の本音はドイツにとどまる難民不認定となった外国人を、できる限り早く強制退去させたい方針である。
2015年1月から6月までに受け入れた難民の数は18万、今年いっぱいに45万人になる見込みである。ドイツ各地でこれに反発した市民による反イスラムのデモ行動が続いている。さらに難民を収容する仮宿泊所の放火や銃撃事件など難民収容施設に対する襲撃事件がこれまでに200件を越えた。
イタリアからフランスに渡る難民も少なくない。欧州には5,200万人の欧州に定住し、世俗化したイスラム教徒がいる。その最大のイスラム系コミュニティー(650万人)がフランスにある。その人数は、フランスの総人口の10%以上を占める。宗教上の問題や国境が接している点でフランスに渡った難民は、しかしさらに英仏海峡を渡ろうとしている。
最近、難民のイギリスへの不法入国の動きが活発になってきた。特にフランス領内のドーバー海峡に面した赤十字難民センターに収容されている難民が、海峡トンネルに不法進入して、イギリスに渡ろうと試みていることで混乱が続いている。ドーバー海峡に面したフランスのカレーで7月30日に難民がドーバートンネルに不法侵入し、20人が警察に阻止された。カレーには3,000人もの難民が密航をうかがって野営している。
欧州各国での難民受け入れの問題で、EUは13日難民の受け入れを加盟国に割り当てることを決定した。しかし加盟国は難民の受け入れに難色を示しており、過去最高となる紛争による難民3,800万人の受け入れは簡単にはいかない。難民が英国を目指す最大の理由は、フランスやドイツにない亡命者としての認定制度と、移民に対する社会の寛容性である。
しかしドイツだけで45万人ともなる難民が英国に殺到すれば、収容能力が限界を超える。難民の収容によって欧州の弱体化は避けられず、ドイツにみられる極右政党の台頭につながる深刻な問題となりつつある。