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12月のOPEC 総会を前に、21日にウィーンでロシア、ブラジル、カザフスタン、コロンビア、メキシコの非加盟国5カ国を含むOPEC技術専門家会議が開かれた。会議の目的は、原油価格の下落と原油市場への対応を協議することで、12月のOPEC総会の動向を唸らすものである。
OPEC内の分裂
OPEC設立メンバーであるベネズエラは、1980年代の固定価格制度を再導入することを提案してきた。今回の会議でも石油価格を回復させるために、1バレル88ドルの下限を設ける案を提案している。そのためには、OPECは非加盟国を含めて、協調減産を実施することが必要となる。
OPEC主要国のサウジアラビア、UAE、クウェートなどは、市場シェアを維持するための現行策である生産枠据え置きを継続すると見られる。一方で、ベネズエラを筆頭に、エクワドール、リビヤ、アルジェリアなどは減産と価格の下限設定を求めるとされる。
注目は世界第5位の原油生産国であるイランの動向である。イランの生産量は現在280万バレル/日である。経済制裁解除から一週間以内に日量50万バレル、数ヶ月後には100万バレル、2016年末には420万バレルにまで増やす可能性を示唆した。イランの国際原油市場への復帰は、原油価格をさらに押し下げる圧力となるのは間違いない。
これまでの最大日量1000万バレルを生産しているロシアも、減産には反対である。ロシアはサウジアラビアと欧州やアジア市場を巡り、マーケットシェアの戦いを行っている。サウジアラビアは原油生産を増やし、アジアと米国向け原油販売価格を引きさげ、競合する原産国に対する競争力維持を目指してきた。対抗するロシアも増産と価格引き下げで、西ヨーロッパと中国市場で優勢なポジションを確保した。
原油価格の下落でほとんどの生産国は増産に踏み切っている。しかし、世界経済の低迷で需要が減少しているなか、供給量は増え、競合国間のマーケットシェアの争いは激化している。
サウジアラビアの財政危機
IMFは2015年の世界経済財政予想のレポートのなかで、サウジアラビアの財政収支は2015年にはマイナス21.6%、2016年にはマイナス19.4%になる見込みだと報告している。原因は主に原油価格の下落とされる。
国家収入の90%を石油に依存しているため、原油価格の下落による損失はGDPの20%以上の損失となった。この状態が続くとサウジアラビアは5年後には財政破綻すると予想されている。
以下はIMFによる、原油生産国の財政収入均等が保てる原油価格の損益分岐点と各国が保有する外貨準備金と金融資産である。左は財政均等を保つための原油価格。右は財政破綻までの外貨準備金や金融資産で持ちこたえる年数である。イランは財政均等を保つには、1バレル80ドルの原油価格が必要となる。80ドル以下で発生する財政赤字が8~9年続くと財政破綻を迎えるとの計算になる。最も余裕があるのがカタールである。原油価格は55ドル、豊富な国家資産で財政赤字を25年弱維持することができる。
サウジアラビアの財政赤字が膨らむなか、財政破綻を避けるために減産や原油価格の下限設定、つまりOPECが方針転換に踏み切ることが避けられない状況に追い込まれている。