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トヨタと販売台数で世界一を争うVWグループ(アウデイを含む)は2014年度の決算を公表した。それによるとVWグループの売り上げ高は20,24億5,800万EU、27兆1,180億円で前年比2.8%、伸び率を更新した。これは営業利益126億9,700万EU(1兆7,00億円)を同社にもたらした。
確かにVWグループの、車種を広げセグメントを網羅しつつ、各々の車種に新技術を投入しアグレッシブなデザインで若い世代を取り込んだ強気の戦略が功を奏したかのようで、さすがのトヨタも販売台数で世界一位の座を一時譲るほどであった。
2014年度の販売台数は1,013万7,000台を記録したがこれは歴代一位、前年比の4.2%増しであったが、好調の理由は主に中国でそれまでの大衆車サンタナをパサート派生車種が置き換えたことが効いている。20年前の中国の道路でみる一般車はサンタナであったが、いまではVWグループの車をみかけることが多い。天津の爆発でも陸揚げされたVW車が大量に炎上したことでも販売の好調さをうかがうことができる。
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物事うまくいっているときに足をすくわれることが多いが、まさにそれがVWグループに起こった。BloombergによればVWグループは正式にアメリカの排ガス規制基準をクリアするために、不正を行ったことを認めた。VWはフォルクスワーゲンとアウデイのデーゼル車をテストする際に、エンジン制御ソフトをかきかえ環境省(EPA)の基準をクリアしたが、実際に販売されている車の排気ガスは基準値の10倍から40倍に達するという。
違反した車種は下記の売れ筋車種を含む。いずれもセグメントの販売トップを争う人気車種である。
— Jetta (model years 2009-15)
— Beetle (model years 2009-15)
— Audi A3 (model years 2009-15)
— Golf (model years 2009-15)
— Passat (model years 2014-15)
Clean Air Actに違反するとして起訴はまぬがれないが、その場合、EPAの制裁金は最大で1台につき37,500ドルとなる。全体では制裁金は18億ドル、約2兆円となる。最大金額が課せられたらなら2014年の売り上げを吹き飛ばす制裁金にVW社はどのように対処するのか注目が集まっている。
2014年に燃費について不正を行ったフォード社は200,000台に、200ドルから1,050ドルの補償をさせられた。2012年位は韓国の現代自動車が燃費に関する不正の疑いがかけられた。VW社は不正を認め調査に協力する姿勢をみせているが、情報と交換に制裁金の減額を狙って司法取引を行うためとみられる。
急発進がソフトウエアにあるとして司法当局に呼びつけられ、日本的な(良心的な)商売を涙ながらに説明したトヨタ社長を思えば、VWグループのCEOは少なくとも、EPAに対して、ではなく購入者に対して説明責任があることは間違いない。ドイツ人が涙を浮かべるとは到底思えないが、誠意をみせる会見を全世界に向けて発信すべきだろう。
欧州のデイーゼル車はアメリカや日本のガソリン車以上のステータスである。原理的にガソリンエンジンよりすぐれていることは確かだが、最近の調査では窒素排出ガスが多いことがわかってきた。これまでデーゼル車に寛容であったEUもこのため、デイーゼル車の排ガス規制を強める方向にある。
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カタログ上はフォルクスワーゲンのデイーゼルエンジンは馬力と燃費を両立させ、他者を圧倒している。しかしその実態がもし有害成分を撒き散らし環境汚染に一役買っているとしたら、ユーザーの熱も冷めるだろう。クリーンデーゼルを武器にした欧州車が日本に攻勢をかけており、気を許せばカタログ上の優位性(馬力と燃費)での売り込みが激化しているが、それが不正の数値なら他国に持ち込むことは許されない。
VWグループとしても競争相手のベンツ社の「ブルーテック」のような新技術に対抗するにはカタログで勝負しなければならないのだろう。しかし不正で信用を失えばVWグループ全体のブランドイメージがタカタ同様に手痛いダメージを受けることは必至だ。
しかしGMやフォードにとっては今回の騒動は救世主となるだろう。しかし残念なことにセグメントに送り込める競争力のある車種を持っていないし、購買層もまた時が経てば忘れ去りカタログを信用してもとにもどるのかもしれない。
結局、技術でモノを売るには真面目に努力して不正を行わない、ことしかないということだろう。少なくとも販売台数で競うことに意味はない。
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