Source: Power Nation
最近ネットで話題になっているテスラ車の「オートパイロット」は制御しやすいEVの特徴を利用し同社のプログラマーを動員してつくりあげた自動運転機能は基本的に高速道路でのドライバーの負担を軽減するものであるが、同社の想定を超えて自動運転に近い公道上での実演を見せつけるユーザーが後を絶たない。
テスラ車のオートパイロットで自動操縦
テスラ社の看板モデルである「モデルS」のユーザーに提供されるのは、自動駐車や高速道路での自動ステアリング、自動の車線変更からなる機能。投稿された動画ではドライバーは、高速道路で、オートパイロットをオンにして、ステアリングから手を離してみせている。動画の道路環境は対面交通がなく混み合っていない直線の高速道路で車線変更や追い越しは楽であるが、ドライバーがウインカーを出すだけで操作は自動で行える様子を示している。最新のVersion 7の試乗の動画をみてほしい。
イーロン・マスクによればオートパイロットはドライバーアシスト機能で手放しの自動運転の機能ではないとしているが、高速道路のように環境が良い場合はその枠を逸脱したドライバーが増えている。Segwayやブースターボード(電動ボード)の公道走行が許されている国だから、長く続く直線道路のような特別の条件であれば問題ないようにも思える。
日産のゴーン社長は2016年に日本で自動運転装置付きのクルマを販売することをニューヨークのモーターショーで宣言し波紋を投げかけた。日産の目指している自動運転は高速道路の渋滞時の自動運転で、テスラ社より低速走行を視野にいれている。
具体的な自動運転の内容は、①先行車のスタートを検知してブレーキを解除して走り出すこと、②先行車をみつけると安全な距離距離をキープしながら、追尾、③先行車が減速し、停車したら自動的に停車する3項目のシームレスな操縦である。なお現在でも車間距離制御を備えたオートクルーズシステムが販売されているが、一度停車したら再び走り出すのは人間の指示による。
自動車メーカーの取り組み方をみると各社とも速度、車間、操舵の制御を行うものの想定している使い方はメーカーによって異なる。
メルセデス・ベンツ
公道での自動運転を目指す。走行範囲は全車速(0-200km/h)、自動運転の走行形態は半自動的な追従走行、60km/h以下では車線表示なしでも走行可能。
BMW
高速道路での自動運転を目指す。走行範囲は高速走行に限定、自動運転の形態は単独走行、前方車両に追いついた場合は追い越しが可能。
VW
高速道路での自動運転を目指す。走行範囲は高速走行に限定、自動運転の形態は単独走行、レーチェンジはドライバーに提案し承諾により自動で行う。
GM
高速道路での自動運転を目指す。高速道路全体、一般道の順で開発を進める、走行範囲は高速走行に限定、自動運転の形態は単独走行。電子地図のバックアップを前提とする。
トヨタ
公道での自動運転を目指す、走行範囲は全車速、自動運転の走行形態は半自動的な単独走行、電子地図のバックアップを想定する。
このほかにAudi、VOLVO、Ford、BOSCHにおいても低速走行の単独自動走行の研究開発が行われている。いずれも50km/h以下の渋滞支援を目的としている。
基本的に道路上を正確にトレースして走るためのソフト開発に中心を置いている。そのためのデータを集めるGoogleカーは屋根の上にあるLIDAR(レーザーセンサー)が特徴。実際の市販車はパートナー企業と組んで車体を製作し現実的なデザインとなる。
Apple
2015年2月14日に自動操縦車の販売に参入する発表を行なった。同社は自動車の専門家を会社に取り込み製作するメーカーと車全体を手がけるというが具体的な計画は不明。
自動駐車機能についてはAUDI、日産が駐車場地図をもとに駐車枠内に自動駐車するシステムを開発しており、トラックの自動操縦技術はメルセデス・ベンツ、スキャニア社が開発中である。スキャニア社はトラックフリートを等間隔で自動操縦運転させれば、スリップストリーム燃費を向上させるとしてトラック用の自動操縦技術を開発している。
ドライバーアシストと完全自動操縦との敷居は高いが道路事情の良い国・地域で通勤のように繰り返しの多い場合には学習することによって、信頼性が高まると思われる。またドライバーの立場でも前者のみを受け入れる人が圧倒的に多いはずだ。使い方さえ間違えなければドライバーの負担を軽減し事故率が減ることは確実である。
しかし全てのメーカーが実装する最終段階においては、各社のシステムを支援するインフラを整備して各社のシステムを標準化する方向に持っていくべきかもしれない。危険なのは自動運転車と人間の運転する車の混在である。例えば対向車をさける場合に反対側にハンドルを切って避けるなければ衝突する。また判断やレスポンスの時間差が致命的な事故につながる可能性がある。しかし最も重要なことは自動車を「A地点からB地点へ最短時間で移動したい」人たちばかりではないことだ。途中で景色を楽しんだり、時には峠を攻めたり、と人は色々な楽しみ方があるので単に移動手段と考える人たちには歓迎されるだろうが、車を運転すること自身を楽しみたい人にとっては退屈極まりない機能でしかない。
いずれにしても道路という共通のインフラを使う以上、建設・管理する国や地方がどのメーカーの車も同じ条件で自動運転できた方がメリットが多いように思える。信号待ちの高齢者や車の後ろから飛び出しかけている幼児も車に限らず道路が認識できれば安心して自動操縦車の公道走行に任せられるのではないか。