電極を自己修復する機能性ジェル

14.01.2015

Photo: openphotonics

 

燃料電池において深刻な問題のひとつとなっている電極材料の劣化だが、このほどテキサス大の研究グループが電極材料の自己修復作用を持つ機能性ジェルを開発した。燃料電池の白金電極には動作中に欠陥が形成され不均一化することが劣化につながる。テキサス大グループはNano Lettersに劣化を未然に防ぐ効果のある自己修復機能を持つ材料をみいだしたことを報告した。

 

市販にいたるまでには数年かかる見込みだがこのジェルは導電性の材料一般に応用できるため、今後さかんになるフレキシブル電子材料への影響が大きいと考えられている。材料の自己修復機能は持続性を持たせるために材料工学者の夢であったが、今回の結果で自己修復材料全体の研究開発に弾みがつきそうだ。

 

従来の電子材料は折れ曲がらず無理に曲げようとすると折れてしまう。テキサス大の研究チームは導電性材料(電極材料)そのものに、柔軟性を求めるのではなく壊れた同士をくっつけること(「自己修復性」で柔軟性を実現した。電極表面に欠陥ができてミクロな裂け目ができると、すきまに新開発のジェルが入り込んで間を埋めて修復するというもの。

 

今回開発されたジェルの特徴は外部から圧力を加えることなくジェルの分子間の強固な化学結合によって、材料同士が結合する。現在は材料を合成するコストが高いためそのままでは市場にだせないが、薄く材料表面に塗布するなどの工夫で実用化が期待できる。日本でも同様な研究が成果を上げている(K Imato et al,  Angew. Chem., Int. Ed., 2011, DOI: 10.1002/anie.201104069)。

 

 

Source: Royal Society of Chemistry

 

フレキシブル電子材料はセンサー機能を有する人工皮膚や義肢など広範囲の応用が可能となる。米国国防総省はフレキシブル・ハイブリッドデバイス開発に5年間で7500万ドルの予算を投入する。

 

フレキシブル電子デバイスの欠点は金属(導電材料)の性質が曲げることで劣化したり材料が破損することであった。そのため導電性材料に柔軟性を持たせようとしていたが、発想を変えて折れ曲がることで発生する欠陥を化学結合(接着反応)で修復する材料で補うことがブレークスルーにつながる可能性がある。

 

 

 

再生可能エネルギーに依存するといっても太陽光や風力だけでは米国のような電力消費の大きい国の発電を賄うことが困難であることが認識され、燃料電池への期待が高まっている。この自己修復機能材料によって電極材料の劣化が防げれば燃料電池で年の大電力を発電することも視野に入るかもしれない。