「イスラム国」への武器供与が疑われる米英

Feb. 26, 2015

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イラク議会の国家安全保障国防会議は、2月 23日にイラク軍が撃墜した英軍機2機が「イスラム国」に投下するための武器を輸送していたことを示す証拠写真を入手したことをイランのFAR News が報道した。


 さらに、イラク政府は「イスラム国」の支配から解放したイラクのAl-Baqdadi や Ramadi地域で、欧米とイスラエル製の兵器が発見され、地域の住民や治安部隊の情報として、「イスラム国」の戦闘員がいる場所に米軍機は数回にわたり武器と食料を投下したことを公表した。「イスラム国」と戦っている他の地域でも同様の情報と証拠があり、議長のAl-Zameli氏は、"米軍が投下した武器と食料が「イスラム国」の存続を維持している"と激しく批判した。


 有志連合によるイラクとシリアでの空爆が開始されて6カ月。空爆は16,000回実施され、その内の80%以上は米国によるものである。「イスラム国」の打倒より、イラクとシリアのインフラ破壊の損害の方が高いとされている。


 

 今後、イラクの国家安全保障国防会議が入手した情報と証拠を基に、調査を実施し、有志連合による空爆についての事実を追求し、結果が公表されることになっている。FAR Newsによれば、すでに議会では、

 

 "イラクにおける「イスラム国」の本部を空爆していない"、

 "空爆は「イスラム国」を標的にしていない"、

 "イラクにおける政治的混乱を招くために、効果のない空爆を行っている"、

 "イラクのモズルとアンバー地区に米軍基地の建設をイラク政府が容認するまで、戦争を意図的に長引かせている"、

 "「イスラム国」は頻繁に武器の投下供与を受けている"

 

などの意見が多い。


 

「イスラム国」戦闘員が使っている武器がどこから調達されているかの問題は、以前から疑問視されてきた。昨年9月に英ロンドンを拠点に小型武器の調査を行っている民間組織の紛争武器研究所 (Conflict Armament Research) の調査はイラクのクルド人部隊が「イスラム国」戦闘員から押収した武器を記録したものである。

 

 その調査によると、「イスラム国」戦闘員が使っていた武器の80%以上は米国、旧ソ連、現ロシア、中国で製造されたものであった。しかしその中で最も大きく占めたのが「米国軍用資産」と記したM16ライフル(上の写真),  RPGを含む米国産武器であった。

 

 

 米軍は10 月に誤って「イスラム国」の支配区域に武器、食料と医薬品を投下したことを認めている。しかし、イラク、シリア、イランの各国政府は、その後も頻繁に武器を投下していると主張している。

 

 コソボ紛争は3ヶ月の空爆攻撃で終結したが、最新のGPS精密爆撃技術と武器を持つ米国の空爆効果に疑問符が残ること、「イスラム国」との戦いは数年要すると述べるオバマ大統領、イラク以外に軍事戦略を立てない国防省、米国は武器を「イスラム国」に提供している現状からみえてくることは、米国と有志連合の長期化が必至の「テロとの戦い」は中東に平和をもたらすものではないことである。