FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)後、量的緩和の終了を正式に表明した。2012年に開始、米国債と住宅ローン担保証券を合わせて毎月850億ドル、総額3兆5000億ドル(約380兆円)を買い入れるプログラムの終了である。注目のニュースであったが、ほとんど報道されていないのが、FRBの発表数時間前に、米国の外交政策をほとんど決めている外交問題評議会の公聴会に呼ばれた、アラン・グリーンスパン元議長(注)の発言である。
グリーンスパンは、量的緩和は資産価格を押し上げ、資本コストを下げたが、実質経済の改善にはほとんど貢献しなかったと認め、量的緩和の終了にあたって、今後金融市場の混乱は避けられないとの見方を示した。正常化するまでの間、痛みを伴った展開となるのは明らかで(バブル崩壊、ドル暴落)通貨の価値が、国の金融政策によって左右されない金を購入するべき。金は世界的に認められた究極の貨幣と、元FRB議長とは思えない言葉を発したのである。
実は、金に関する見解を述べたのは今回が初めてではない。最近のものでは、外交問題評議会が発行しているForeign Affairs誌9月号の論文で、最近の中国を例に取り上げ、中国の金の保有量が増加している理由として、人民元の保証であると指摘した。では、なぜ保証が必要かといえば、全ての紙幣は保証なしでは永久に同じ価値を持ち続けることは不可であるためだからである。そのため各国は金を保有しており、その金を中央銀行が預かっているのである。
FRBが量的緩和と題して、3兆5000億ドルの通貨を増発したことで、ドイツのワイマールのようにインフレと不況が今後アメリカで起きるのは時間の問題ではないか。グリーンスパンはこのことを認識しているからこそ、金の購入を勧めているとしか思えない。
そもそも、グリーンスパンがFRB議長時代の政策が量的緩和の政策を実施する経済、財政状況を作りだしのである。グリーンスパンの発言は、決して許してはならない懺悔に聞こえた。中央銀行の金融政策によって、バブルと不況が作られている。国の政府機関でもない、株式会社である中央銀行の役割と権限を真剣に国民が議論するべき時期にきたのではないか。
(注)1987年から2006年までの18年間、連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めた。