CDC(アメリカ疾病管理予防センター)とアメリカ合衆国国土安全保障によると、西アフリカ3カ国からアメリカに入国する人は、一日150人と少なく、エボラ出血熱の脅威は低いと発表してきた。だが、その人数が一週間に1050人、一ヶ月に4,500人、半年に27,000人、一年に54,750人となると、決して脅威ではないとは言えない。
空港での検疫強化
空港では、高熱がある渡航者を感知する赤外線サーモグラフィーと問診を受ける検疫対策が強化された。エボラ出血熱の症状の一つである高熱に関しては、アメリカ国立衛生研究所のDr.
Anthony Fauci所長は、高熱がない限り、100%感染者ではないと断言している。従って、熱が38.6度以上なければ、エボラの疑いはないとされている。しかし実際、スペインのエボラに感染した看護師は38.6度以上の熱がなかったのである。感染者でも高熱がなければ、検疫をくぐり抜けることは可能と考えるべきである。
ロンドンのインペリアル・カレッジの疫学権威のDr. Christl Donnellyが筆頭を勤めるWHOエボラ対策チームが10月の米医学専門誌ザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで発表した論文のなかで、高熱のない感染者を確認している。調査対象となった感染者3,343人と疑いがある667人のうち、87.1%は高熱の症状をみせたが、12.9%は高熱がなかったのである。調査のなかではCDC
の38.6度より低い38度以上が高熱とされている。
ナイジェリアでの感染終息から学ぶこと
10月20日にWHOは、ナイジェリアでエボラ出血熱が終息したことを発表した。最初の感染者、リベリアから渡航したリベリア人(7月25日の記事)がウイルスを持ち込んだとされる。感染が確認された直後、2ヶ月間にわたり感染者と接触した可能性のある900名を特定、健康の監視と隔離、大統領の非常事態宣言で西アフリカ3カ国からの渡航禁止など、徹底した感染拡大防止対策をとったことで、感染の封じ込みに成功したのである。
オバマ大統領はアメリカで西アフリカ3カ国からの入国を禁止すれば、エボラ出血熱の感染拡大に繋がると、発言をしているのに対し、国民や議会の間で渡航の制限や期間限定に禁止を求める動きが高まっている。国土安全保障もようやく、西アフリカ空の入国を5つの国際空港(ニューヨークのJFK,
ワーシントン・ダレス、シカゴ・オヘア、ニューアーク・リバティー、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ)に限定することを決めたが、滞在ビザは普通通りに発行するとしている。現在、西アフリカ3カ国で1万3,500人がビザを待っているといわれている。ビザ発行の限定や一時停止がない限り、アメリカで第2のダンカン氏がでるのは、時間の問題である。
皮肉なことに、アフリカのルワンダは、アメリカやスペインからの渡航者に対し、エボラ出血熱の検疫対策の実施を強化している。アメリカ国籍の人やアメリカに渡航した人は、エボラ出血熱の症状がなくても、ルワンダに滞在中毎日、健康状態の報告を義務づけている。下の写真は空港で西アフリカ行きを控えるように警告するボード。