フェアトレードはエボラ出血熱を防いだか

Nov. 6, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コートジボワールはギニアとリベリアの隣国で、象牙海岸を代表する西アフリカの共和国である。国境を接しているにも関わらずエボラ出血熱患者の報告は無い。一体どこが違うのであろうか。コートジボワールは1960年にフランス植民地から独立し共和国が建設された。

 

 同時期に建国された西アフリカの独立国家と異なるのは建国から1970年代にかけて、年率8%という、アフリカにあっては驚異的な経済成長を遂げた点である。この際立った経済成長は「イボワールの奇跡」とまで呼ばれ、アフリカ発展の模範となったのである。

 

 これを支えたのは現在、ダントツで世界一の輸出を誇るカカオ農業である。カカオに続き、石油製品や材木の輸出が好調なため貿易は毎年約10億ドルの黒字でGDPは国、一人あたり、ともにアフリカ圏内では上位にランクされる。

 

 建国後しばらくは政権が安定したが2000年に入ると内戦やクーデターが起こり、不安定な政府は他の西アフリカと大差ない。注目すべきは陸軍6500名に対して憲兵隊と大統領親衛隊が人数でこれを上回り、大統領警護がずば抜けていることである。そのせいか他の西アフリカ諸国のような流血の内戦というより、政治家同士の争いで民衆が巻き込まれることはなかった。

 

 

 コートジボワールのカカオ生産量は124万トンで、世界シェア34%と2位のガーナ(17%)に大差をつけて世界市場を一手に引き受けている。建国以来カカオに重点化した農業政策の結果であるが、カカオ農園が児童奴隷を使っていた事実が明るみに出ると、かつては恩恵にあずかっていた先進国が児童奴隷禁止の運動を始め、90%の農園で児童奴隷が働かされていたコートジボワールは反児童奴隷運動の標的となっていった。

 

 コートジボワールを含む西アフリカ4国には28万人の児童奴隷がチョコレートの味を知らないままカカオ出荷に関わっている。実態は女性ジャーナリスト、キャロルオフ著の「チョコレートの真実」に詳しくかかれている。フェアトレードというしくみは奴隷制度をなくすために考えられた制度で、原理的には「生産者がある一定の労働と生産基準を満たすことを条件に、国際市場価格と比べ、少し高い価格で作物を買い取る」とした。しかしフェアトレードによって児童奴隷がなくなったわけではない。

 

 農業を主にした産業構造はしかし、衛生面に留意する社会環境を整えることに役立ったようだ。農園ではカカオは労働者の手に直接ふれる。もし不衛生な環境で収穫されて輸出されれば、ウイルス後と輸出される。それは絶対に避けなければならないはずである。カカオに特化した農業国であることがエボラ出血熱感染者を出さずにすんだ理由かどうかはわからないが、少なくとも豊かさの差が関係していることは想像に難くない。

 

 

 西アフリカ発のエボラ出血熱はまるで西アフリカの社会問題を訴える人々の心の叫びともとれる。これをきっかけに先進国が搾取構造から足を洗うことだけで、彼らの生活水準を上げ感染者を出さないようにできるのではないか。