パリに向けて離陸準備中だった、仏ダッソー社製のファルコン(プライベートジェット)が20日午後11時57分(日本時間21日午前4時57分)、除雪車と衝突し、乗客1人と乗員3人の全員が死亡したと発表した(タス通信)。
プライベートジェットは数人から十数人程度を定員とする小型ジェット機で、最近では米国の3大自動車メーカーのCEOが、ワシントンに公的資金の注入を嘆願しに来た際に、各社とも競うかのようにプライベートジェットで乗りつけて顰蹙を買ったことが記憶に新しい。
プライベートジェット市場は世界的な景気の不調と裏腹に、上昇を続ける一方で、専用のターボファンエンジンが開発され本格的な競争時代に突入した。代表的な機種としてはガルフストリーム社のIVシリーズが乗員2名、乗客14-19名で500機以上生産されたプライベートジェットの代名詞ともなっている(下の写真)。
この他にやや小さいリアジェット社の9人乗りリアジェット45、ダッソー社のファルコンが製造する他、最近ではホンダジェットが参入したことで話題となった。今回の事故の機体はダッソー社のファルコンで欧州の企業や富豪の間では人気が高い。ダッソー社は軍用機メーカーでフランス空軍の戦闘機ミラージュなどで有名な歴史のあるメーカーである。
プライベートジェットの多くは双発で尾翼に近い胴体にターボファンエンジンんを取り付けているので機体はどれも似てくるが、ホンダジェットだけは異色ともいえる主翼上にターボファンを持つ独特のデザインとなっている。
事故のおきたブヌコボ(Vnukovo)国際空港はモスクワの3つの国際空港の中では最も古い空港であるが、3,000m級滑走路は1本で国内線と共有するため、国際空港としてはJALをはじめ各国のエアラインが乗りいれるドモジェドヴォ空港が利用客が多い。
今回の事故では、フランスの石油大手トタル(Total)のクリストフ・ドマルジェリCEOら4人が死亡した。しかし墜落ではなかった。搭乗するプライベートジェットが除雪車に衝突したのであるが、当局によると除雪車ドライバーが酒を飲んでいたという不可解な説明が気になる。確かにプライベート機は小さく大型ジェット機に比べれば、みつけにくいとはいえ、勤務中に酒を飲んだ作業員が滑走路を除雪車でさまよっているのはどう考えてもおかしい。ドマルジェリCEOはプーチンの評価も高かったという。ウクライナのマレーシア機撃墜事件とかぶる状況なのである。
8月にはブラジルで10月に行われる大統領選挙に出馬予定だった社会党(PSB)党首エドゥアルド・カンポス氏(49)が13日、選挙運動のために搭乗していた自家用ジェット機の墜落事故で死亡した。
プライベートジェットの旅は一般の入国審査も通らずに空港についたら迎えの車で目的地に直行できるので、快適な移動手段ではあるがときとして代償が大きい。最新のプライベート機では大型旅客機も顔負けの電子機器が搭載されていて事故の確率は少ないはずなのに事故が相次いでいる。