米労働省が発表した9月の雇用統計によると、失業率は5.9%、6年2ヶ月ぶりの5%台にまで改善された。だが、この数字は決して、米国経済の回復を反映したものではない。
政府は失業率の低下は景気回復による就業者数の拡大、つまり雇用情勢の改善の傾向にあると主張した。これは、なぜ重要かといえば、米連邦準備制度理事会(FRB)は、雇用情勢を金融政策を決める際の主要な判断材料としているからである。FRBは10月28、29日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で、 失業率の改善は景気が回復している証拠であると結論づけるとみられる。その結果、これまで続けてきた量的緩和政策の終了を決めるであろう。
しかし、失業率が下がった背景にある現実は報道されていない。実際には景気は回復していないのである。
労働市場の現実
失業率より労働市場の状況をより明確に反映するのが雇用統計のU-6の数字だ。失業率の計算対処にしている「正式に失業状態」には、就職したいが、厳しい求人環境で求職活動を断念した人、正社員として働きたいが、パートタイムの職しかないため、経済的理由からパートタイム職についた人、求人活動は行っているが経済的理由から何らかの社会保障を受けている人などは、含まれていない。仕事に付きたいが、現状では労働市場環境が悪すぎるので、一時的にあきらめている人達も含まれていない。U-6にはこれらが含まれているので、より正確な雇用状況を反映している。このU-6によると失業率は、11.8%である。
もう一つの重要な数字は、労働市場に占める労働者数である。労働者参加率は59%と36年ぶりの低水準まで下げている。9月には、31.5万人が労働市場から退出しており、現在、1億200万人の人が労働市場に参加していないのである。つまり、労働世代のアメリカ人の内、1億200万人が仕事を持っていないことを意味する。
9月に増えた求人職の80%は低賃儀、最低時給の職であった。高所得、専門職、製造業職はなく、ほとんどはサービス業での職である。2013年の新規求人職の88%は低時給パートタイム職であったので、この傾向は2014年にも続いているのがわかる。
アメリカは長期にわって、失業危機にあり、労働市場の悪化は続いている。もし、今のように毎月約30万人が労働市場から退出する傾向が続ければ、計算上オバマ政権の残り27ヶ月で、つまり2017年には失業率は1%となる計算になるが、その時には、アメリカは社会主義国家になっているかも知れない。
アメリカの労働参加者数の変動。