Photo: willschlough.blogspot.jp
市場操作、インサイダー取引、違法ローンの貸付、銀行資金の着服などの刑で2008年の金融破綻を引き起こしたとして、アイスランドが26人の国内3大銀行の最高経営責任者を含む銀行幹部を有罪にし、責任を問わせたことは、まだ記録に新しいニュースである。このほど、アイスランド財務大臣は、国営化された銀行の時価総額の一部を国民に配分する提案を出したことが注目を集めている。
アイスランドは欧州の中でも、2008年の金融危機から完全に経済回復を遂げた唯一の国である。金融危機を招いた国内3大銀行の対外債務はGDPの10倍まで膨れ上がり、返済が不可能となった。世界各国が公的資金を使って銀行救済を行っていたなか、アイスランドは銀行を破綻させた。銀行ではなく、納税者を保護する政策をとったのである。
政府は対外連動型のローンを違法とし、世帯債務が住宅価格の110%を超えた場合、その分のローンが免除された。このような救済対策により、多くの国民を経済破綻から救済したのである。国家破綻後、IMFから210万ドルの救済資金を借りた。緊縮財政策を実施、通貨を30%以上切り下げ、輸出を増やした。その結果、経済の健全性を取り戻し、IMFに返済期限前に全額返済を果たした。
今回注目を集めているのが、ビャルニ・ベネディクソン財務大臣が提案している、全ての国民に国が買い取ったランズキ銀行の時価総額の5%を分配すると約束したことである。国民1人当たり30,000アイスランド・クローナ(ISK)、日本円で約27,919円が支給されることになる。
アメリカのエイブラハム・リンカーン大統領の「ゲティスバーグ演説」の一部「人民の、人民による人民のための政治」を国民が強くアイスランド政府に求めた結果が今のアイスランドである。言い伝えによるとアイスランドにサンタウロースはいなくて子供を食べてしまう13人の小人たちがいるという。
いまでいえばさしずめ銀行のことだろう。国民にとってベネディクソン財務大臣は間違いなくサンタクロースである。
関連記事