6月に欧州連合 (EU) は、加盟国のうち11カ国に金融機関の再生・破綻処理の際の「ベイルイン」を導入するよう警告を出した。それから4ヶ月、EUはオランダ、ルクセンブルク、ポーランド、スェーデン、ルーマニア、チェコ共和国など6カ国を「ベイルイン」制度の導入拒否で、欧州司法裁判所に訴えた。
背景は2008年の金融危機
2008年のリーマン・ショックの際、金融機関を破綻危機から救済するために各国は公的資金(ベイルアウト)を用いた。税金を使っての銀行の救済は国民からの批判を受け、次の金融危機の際に破綻処理に対応する新しい枠組みとしてベイルインが導入された。すでに13カ国がベイルイン制度を導入、2016年 1 月1日に正式に発動される予定である。
金融機関の再生と破綻処理 (Bank Recovery and Resolution Directive: BRRD)法の一環として、ベイルインは銀行救済に公的資金を使わないとする制度である。ベイルインが発動されれば、株主や一般債権者が救済負担を負うことになる。具体的に、一般債権者の預金者は一律に預金額の8%を銀行の救済資金として負担することになる。ベイルインの預金対象を全額保証の10万ユーロ以上の預金を対象としている。しかし、状況の深刻さによっては、対象額や負担額が変更され、キプロスやギリシャのように後から全額保証の撤廃や負担増も十分考えられる。
ベイルインの法整備で足並みがそろわないEU
欧州司法裁判所により執行命令が発動すれば、訴えられている6カ国はベイルイン制度を導入するまでの期間、1日毎に罰金が課せられることになる。これまで、加盟国はベイルイン制度を導入するために、それぞれの国の法整備を行ってきた。ベイルイン制度を導入してこなかった6カ国のうち、この法整備が難しいとする国があれば、ベイルインを疑問視する国もある。
EUは移民政策を巡り、崩壊の危機を迎えているなか、全19加盟国間の金融政策の統一を果たそうとしている。リーマン・ショックの時と同様に、手法は異なるが「大きすぎてつぶせない」銀行の救済は国民の負担となる。この問題に議論を向けなければ、「大きすぎてつぶせな」銀行はいつまでも国民の負担となる。