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Uranium 1というロシアのウラン採掘会社はカザフスタンのウラン鉱山の利権を一手に握るが、このたびロシアの原発企業ロスアトムに買収されて、核燃料から原発建設までを一貫して請け負う巨大企業が誕生した。もちろんロシア国営企業である。カザフスタンは世界のウラン生産量の27%を占めるが、カナダ企業を買収したことで、世界1位のウラン採掘グローバル企業となる。
Uranium 1の採掘会社買収は着々と進められており、2013年1月のプラウダ紙は「ロシア(ロスアトム)が世界の原子力市場を支配」とする記事をかいている。ロスアトムはロシア国営企業でロシア型原子炉を建設する企業でこれまでは原発建設企業であったが、Uranium 1の買収でウラン(核燃料)の供給から原発建設までを一貫して請け負う会社となった。
しかしロスアトムのカナダの採掘企業の買収劇にはある米国人の協力があった。ビルクリントンである。このカナダ企業はクリントン財団の有力な出資者(注1)でもあったが、クリントンの支援でロスアトムに買収されたUranium 1への買収が成立した。
本来ならウクライナ問題をめぐって制裁対象国であるロシアの国営企業に北米の有力なエネルギー資源であるウラン採掘会社(注2)を買収させることは国益に反することである。そのためウラン資源に関する企業買収は米国務省の承認が必要になる。買収当時の長官はヒラリークリントンであった。
(注1)クリントン財団に約3千万ドルの寄付を行った。
(注2)アメリカのウラン資源の1/5に相当する産出量を持つWily Creek鉱山資源。
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カナダ側の資料によればUranium 1からクリントン財団に約230万ドルの資金が流れたが、オバマ政権ではすべての寄付金を公表しなければならない規則になっているが、財団はこの事実を公表していない。「成功報酬」ととられるからだ。Uranium 1がカナダ企業を買収した直後にモスクワで講演したヒラリークリントンは50万ドルという破格の謝金を受け取った。
Uranium 1によるカナダ企業買収劇に関する資金の流れはニューヨークタイムスの独自の調査と近く発刊される”Clinton Cash”の著者のScweizer氏によるものである。
クリントン財団の外貨資金はヒラリークリントンの影響力のおかげで2億5千万ドルに達する。「成功報酬」はクリンントン事務所によって否定されているが、Uranium 1がカナダ資源の採掘権を手にしたことにより、世界のウラン採掘市場は大きく変貌する。
世界のウラン資源を支配するロスアトムはプーチンにとって西側諸国制裁に対する願ってもない切り札となるだけでなく新興国に原発を核燃料供給と一帯で売りこむことで、他国の企業グループ(アレヴァ、東芝-ウエスチングハウス、日立-GE、韓国企業連合)に有利な販売が可能になる。将来、世界の原子力エネルギーを支配するロスアトムはロシアの最大の武器となるかもしれない。
カナダに本社を置くグローバル企業、Uranium 1がロスアトムに買収される際には2009年の自社株の40%暴落や政府による介入があったとされる。ロシア政権に近いロスアトムはウラン資源を確保するため虎視眈々と買収工作を進めて来た。クリントンとのパイプはカザフスタンにある米大使館を通じての要請によるものであった。
あえて敵対する陣営に有利な買収を許したクリントンは米国弱体化に手を貸したに等しい。Uranium 1はユタ州のウラン鉱山も近く買収するほか、ワイオミング州、テキサス州、ユタ州に鉱山を持つEnergy Metals Corporationの買収が続く。アメリカの資源がロシアに切り売されている現実が政権に近いい協力者の存在とその意図に目を向ける必要がある。