Photo: Australian National Review
米投資銀行のゴールドマン・サックスは、2008年に起きたリーマンショックによる金融危機は終わることなく、未だに続いており、今後世界的な「金融危機の第3の波」が押し寄せているとするレポートを発表した。ゼロ金利政策を実施してきた各国中央銀行とその制度を活用してあらゆる資産価格バブルを引き起こし、高収益といった恩恵を受けてきたはずの投資銀行が次の金融危機の警告を発したことになる。
債務のスーパーサイクル
ピーター・オッペンハイマー氏を中心とするアナリストグループによると、債務のスーパーサイクルをいくつかの段階の「金融危機の波」と名付けている。第1の波は、2007年末から2009年に起きたサブプライムローンの問題と住宅バブルの崩壊である。第2の波は、2010年から2012年半ばに米国から波及したユーロ圏ソブリン危機。そして、2014年後半から始まった新興国の債務問題を第3の波としている。その特徴は、中国や新興国の経済成長の減速、世界的なデフレ、コモディティー価格の急落、米ゼロ金利政策が引き起こした新興国の債務バブルである。
第3の波
2008年の金融危機以降、新興国の中央銀行が実施した低金利政策で、各国債務は膨れ上がった。9月にIMFは、新興国の企業の借入額は10年間で4.5倍に増加、2004年に約4兆ドル(48兆円)であったのが、2014年には18兆ドル(216兆円)をはるかに上回り、今後の企業破綻の増加に備えるように警告を出した。
GDPに占める企業債務は2004年の26%から2014年には74%に増加。最も増加率が高かったのが中国で、トルコ、チリ、ブラジル、インド、ペルと急成長を遂げた新興国であった。
当然、経済成長が減速すれば、企業が抱える巨額な借入金の返済は困難となる。
状況をより深刻にするのが、新興国通貨がドルに対して下落しているなかで、企業や銀行が抱えるドル建て債務が膨れ上がっていることである。過去1年間でブラジルのレアルは40%超、マレーシアリンギ、トルコリラなどは20~30%下がっているため、返済困難に陥る企業や銀行は増加することは確かである。
この新興国の債務危機は新興国に留まらず、ゴールドマン・サックスを含むドル建ての借出金を提供した多くの先進諸国の金融機関に波及し、世界規模の金融危機に発展していくことになる。
20年続くとも言われている債務のスーパーサイクル。米国サブプライムローン危機から始まった債務問題。米国の景気回復を妨げたのが、欧州のソブリン危機。そうして、米国や欧州の景気回復を妨げるのが新興国の債務問題である。
債務問題は解決されず、債務の波が来るたびに、世界全体の債務は拡張している。2007年に142兆ドルであったのが世界の未払債務額(政府、金融機関、企業、家計を含む)は、2014年には199兆ドルにまで膨れ上がった。やがて来る債務危機は世界各国を同時に巻き込む、2008年より数倍も深刻なものとなるであろう。