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2014年7月17日にマレーシア航空のMH17便がミサイルで撃墜されウクライナドネツクに墜落して以来、ウクライナ親ロシア派が撃墜したという報道が(ロシア側の強い否定にもかかわらず)、世界中を駆け巡った。
MH17便はボーイング777-200ER機でウクライナ上空1万mを飛行していた。ウクライナ上空を飛行するルートは避けるエアラインもあったが同時刻に25km離れた地点をシンガポール航空とエアインンデイアのボーイング機も飛行していた。MH17便はロシアとウクライナ国境の50km離れた地点で消息を絶った。乗員乗客合わせて298人が犠牲となったこの事件は世界が注目した。
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アメリカの情報当局が親ロシア派が撃墜したとしたこともあって報道の多くはウクライナの親ロシア派が地対空ミサイル発射したとした。このことはロシア側からウクライナへロケット弾が打ち込まれたことから、誘導された推論であったがこのことでロシアへの制裁が始まった。
ウクライナのポロシェンコ大統領はしかし事故ではなくテロリストによるものとして正規軍の発射ではなかったことを強調した。さらにウクライナの親ロシア派武装集団が誤って民間機を撃墜したとする会話が公開されるなど、世論は親ロシア派のミサイルで撃墜されたという見方が強まった。
オランダの調査委員会の最終報告書ではロシア製のBUKミサイルで撃墜されたとしている。しかしこのほどBUKミサイルの製造元であるAlmaz-AnteyはBUKミサイルの近接爆発によれば標的航空機に特徴のある蝶々型のパターンの穴が生じることを実験で明らかにした。同社の調査ではBUKミサイルの証拠となる特徴的なパターンが墜落したMH17機から見つからなかったことを明らかにした。このことから同社は撃墜に使われたミサイルがBUKではなかったと主張した。下の写真の機体の残骸にも特徴的な穴があいている。この穴には弾頭に依存した特徴的なパターンがあり、それは旧式のBUKミサイルによるものであることがわかった。
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オランダ調査委員会は9M38シリーズのBUKミサイルの弾頭9N314Mが使われたとしたが9N314Mでないことが証明されたのである。
ロシア軍は旧式の9N314を持つBUKミサイルを配備していないしウクライナに配備されているBUKミサイル弾頭は1982年以降、新型に変更されている。このことからMH17便を撃墜したのは旧式なBUKミサイルで兵器の横流しでこれを手にれたテロリストによる犯行であるとはいえても、親ロシア派武装集団と断定することは困難になった。オランダ調査報告はアメリカの情報に引きずられた可能性が高くなったが依然として実行犯は特定できていないことに変わりはない。