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自分の周りにあるサンデイスクのフラッシュメモリーとウエスタンデジタル(WD)のHDD製品は数えてみないとわからないほどである。きっと若い世代はこれらの企業の製品なしではやっていけないくらいだろう。筆者はHDDやメモリーはスペックと価格だけでは購入する気にならない。製品の故障率が多い韓国メーカーは意識して避けるようにしている。
メモリーやHDDはなるべく国産を選びたいのだが、価格を考慮してなおかつ不具合の少ない製品となると、それぞれサンデイスクとWDとなるが、期待を裏切られることはない。メモリーとHDDのメーカーがひとつになるという背景は興味深い。つい最近デルがストーレッジ大手のEMC買収というニュースが流れIT業界再編の兆しかという記事をかいたが、今回の買収で再編の動きが加速される。
メモリーとHDD市場のシェア
2014年度第3四半期のNAND型フラッシュメモリーのメーカー別売り上げはサムスン(30.8%)、東芝(20.5%)、サンデイスク(19.7%)がトップ3だがサンデイスクと東芝は売り上げが24-25%伸びた。フラッシュメモリー販売の好調さは各社共通で好調なスマホ販売によるもの。2014年4-6月期HDDの売り上げトップ3はWD(45.7%)、Seagate(38.1%)、東芝(16.2%)である。
今回の買収はHDDトップのWDがメモリー3位のサンデイスクを190億ドル(約2兆円)で買収したということだが、サンデイスクのメモリー工場に東芝は共同出資しており、その東芝はHDDの売り上げトップ3位であることを考慮すれば、HDDとメモリーでWDと東芝でどちらも過半数のシェアを握ることになる。
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HDDからSSDへ
一方、HDDのハードウエアはメモリーベースのSSDに変化しつつある。起動が早く小型軽量でしかも衝撃に強いためポータプル機器に最適であるためだが、これまでのネックは価格にあった。WDがHDDをSSDに置き換えて市場を確保するためにはメモリーメーカーを取り込む必要があった。この方向性に関して東芝の意向でもあり買収は両者の将来性に有益とされた。
サンデイスク買収にはこのためHDD大手のマイクロンからも誘いがあったが、サンデイスクは業界No. 1のWDを選んだ。サンデイスク株は2015年に入って(将来有望なSSDを持っていたにもかかわらず、)37%下落していた。
サンデイスク株には予想を下回るとはいえ15%のプレミアがついている。買収に必要な190億ドルをどのように支払うのか注目されるところだが、ここにまたチャイナマネーが登場する。買収資金の融資は中国政府系の投資金融による。習近平は米国ですでにボーイング社と4兆円の商談を成立させ、英国では原子炉などのインフラ事業に7兆円の融資を約束した。今回の融資も対米融資の一環とみるべきだが、実質的にIT企業再編の動きが加速し、結果的に韓国勢力を圧倒することとなった。
SSDの需要はスマホ、タブレットの他にもビッグデータを支えるクラウド、その実態であるデータセンターのストーレッジに向けて将来性が高い。賢く使われたチャイナマネーといえるかもしれないが、再編は始まったばかり。韓国、台湾をはじめアジア勢の今後の動向が気になる。