グラフェンでつくる電子皮膚

02.11.2015

Photo: Ulsan National Institute of Science and Technology

 

新しいiphoneにはタッチパネルが圧力を感じて擬似的なレスポンスをする機能がついた。入出力情報量が増えて端末の能力が向上したことはいうまでもないが、ロボットの手足に圧力センサーをつけてモノを掴んだり潰さないように運んだりすることはこれまでも研究されてきた。一方でセンサー機能を2Dにすれば皮膚のように接触時の位置情報と強さが得られる電子皮膚が開発されている。


電子皮膚では圧力の他に温度情報も同時に得られるため基本的には人間の肌が伝える感覚情報を伝えることができる。実験では電子皮膚は感度が高いためその上を流れる水や髪の毛1本が落ちたことも認知することができるという。製作したのは韓国のUlsan National Institute of Science and Technology (UNIST)Park教授。


人間の皮膚(指先、左の図)には表皮および皮膚の微小組織があり、無数のセンサーが仕込まれている。特に指先のセンサーは密度が高くより多くの情報を脳に伝達することで、接触しているものを識別して微妙に力を制御し器用に道具を使うことが可能になる。



電子皮膚技術はロボットが対象物の表面温度と硬さを識別して壊さずに掴むために必要不可欠なものであった。しかしこれまでは温度と圧力を同時に検出することが困難であった。韓国の研究チームは圧電フイルムを用いて指先のような高感度の電子皮膚を開発した。


高分子複合体と還元されたグラフェンを用いることにより温度と圧力を検出する電子皮膚が可能になった。これにより圧力の異なる水流を「感じる」ことができ、皮膚に落とした髪の毛1本も識別できたたという。この技術により腕に取り付ければ血流による皮膚の温度変化も検出できる。


またスタンフォード大学の研究チームは皮膚表面のセンサーの入力を神経組織に伝えることに成功した。原理はセンサー圧力を光信号に変換し光に応答する

神経繊維に信号を伝達するもの。



Photo: extremetech


将来は電子皮膚が人間が感度を有する温度と圧力範囲で接触物の情報を神経に伝えることも可能になる。この技術の革新はグラフェンという炭素が繋がってできた電気を流すナノ物質を使う点にある。圧力でこのナノ物質が収縮すると電子の伝導が変化することにより、圧力を検知する。ナノ物質の電子皮膚へ応用は将来性が高い。神経伝達は電気パルスによるので電子皮膚の電気シグナルを脳が「感じる」ことができる、というのがポイントである。