NATOの決断

Sept. 4, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 世界中で複数の地政学的危機が勃発している中、9月4~5日に英国、ウェールズでNATO加盟国の首脳と今回ウクライナのポロシェンコ大統領を含めた首脳会議が開催される。今回の会議は、1989年のベルリンの壁が崩壊してから、ヨーロッパ、アメリカだけでなく世界各国の将来にとって最も重要な会議となるであろう。

 そこでの議題は、シリア、イラク、リビア、エジプトで勢力を拡大しているISIS, アフガンでの新たな長期的な軍事介入、拡大を続けるサイバーテロ、南シナ海における領有権紛争、エボラの脅威、気候変動による災害などの対応についてである。しかし、最重要議題はやはり、ウクライナ情勢を巡るロシアの脅威への対応となるのは間違いない。



 すでに、首脳会議が開催される前に、NATOは加盟国7カ国(英国、デンマーク、ラトビア、エストニア、リトアニア、ノルウェー、カナダ)でロシアの脅威に対応できる「機動性と攻撃力を備えた」10,000人部隊を創設することを発表した。おそらく、ロシアの国境に面した複数の国で、新たな基地の配置が決定されると思われる。



 ここで注目されるのが、ドイツの決断である。メルケル首相は東欧地域にNATO軍の長期にわたる駐留に賛成するのかが注目される。賛成すれば、ロシアの国境はNATO軍に囲まれることになる。石油の30%と天然ガスの40%をロシアに依存しているドイツがロシアと敵対関係になるのは避けたいのが本音ではないか。すでに、ドイツでは、ロシアへの経済制裁の反動は大きく、経済界からはアメリカ主導の対ロシア外交への批判が噴出している。現在, 2000社以上のドイツ企業がロシアで投資やビジネスを行っているため、両国は経済的にも依存関係にある。ドイツが反対すれば、ポーランドやバルト3カ国は困惑を強めるのは確実である。

 歴史的にみれば、米国主導の外交政策は常に、破壊と戦争である。アメリカが世界第2次大戦以降、何らかの戦争に関わっていない年はない。時には、戦争を起こすために、プロパガンダも使う。例えば、確実な証拠がないまま、イラクに大量破壊兵器があると断定、大義とし戦争を起こしたこと。ウクライナの紛争も、対ロシアのアメリカ外交政策で始まったとも言える(注)。



 ドイツ、NATO はどう決断するのか。その決断によって、世界情勢は大きく変わり、またNATOの存続を大きく左右するのは間違いない。NATO の決断によっては、世界を巻き込んだ戦争に発展していくのも、否定できない。

(注)背景にあるいくつかの事実を再検討することが必要である。


⑴ウクライナでは、選挙により新露政権が成立、NATO加盟に対して国民はNoを突きつけた。それに対して欧米派(ネオナチ)は首都キエフでデモを始め、そのデモが暴力化、テロ活動にまで発展し政権交代となる。IMF や欧米にちかい元銀行家のヤツェニュクが首相となる。国民により選らばれた首相ではない。


⑵3月にクリミアを併合したロシアは、クリミア市民による住民投票による結果であり、武力で併合したものではない。


⑶マレーシア航空機MH17便を撃墜したのは親ロシア派である明白な証拠はまだ出ていない。未だに、ブラックボックスの解析の結果が発表されていないのはなぜか?