失敗の連鎖ー極超音速滑空機

Aug. 28, 2014

 

 米国、中国、ロシア、インドがこぞって開発にしのぎをけずる極超音速滑空機とは何なのか?まずHGVはHypersonic Glide Vehicleの略であり、大陸間弾道ミサイルの弾頭に搭載されて発射され、その後、滑空して大気圏と宇宙の境界(100km)領域のニアスペース(準宇宙)を飛行し極超音速で目標に接近し、迎撃される前にミサイル攻撃を行う攻撃機のことである。



 HGVは大陸間弾道ミサイル(ICBM)によって搭載して発射され、地表から約100km上空の宇宙空間で、ロケットから切り離され、音速の10倍以上で飛翔する。一体、何故将来、4強がこの計画に興味があるかというと、大気圏と宇宙における兵器開発に比べて、ニアスペースは未踏の領域であるのと、大気圏の空気抵抗を大幅に減らして、大陸間を高速で飛行することによる攻撃CPGS(Conventional Prompt Global Strike)が大国の軍事的優位性に必要となることを認識した結果だろう。

 例によってFalcon HTV-2など、米国が先行している中、13兆円にも届く12%の伸び率の軍事予算と情報漏洩に助けられた、中国ではWU-14という機体を開発して来た。中国のステルス戦闘機の分野でもJ-20という実機の飛行テストに成功し、技術の高さを示している。そんななかで極超音速滑空機の事故が続いた。香港英字紙 South China Morning Postは8.22付けで、中国軍が8.7日にWU-14の発射実験に失敗したと伝えた。



 一方米国防総省は25日、アラスカ州で極超音速兵器の発射実験を行ったが、何らかの異常があったため発射直後に実験を中止し安全確保のため発射から4秒後に破壊されたと報じた(ロイター)。 AHWとはAdvanced Hypersonic Weaponの略で陸軍の極超音速兵器をさす。空軍のHGVと並んでCPGSの主力兵器である。中国、米国とも失敗した極超音速兵器ではどこが難しいのか。

 人類の飛翔体はこれまで、大気圏の内側の航空機と宇宙ロケットに区別されて開発されて来ており、スペースシャトルを除けばニアスペースの経験がほとんどない。また音速の10倍という極超音速の機体設計にも蓄積がない。人類未踏の領域の技術開発なので技術的問題が多い。ニアスペースという新しい舞台で、優位性を持とうと必死だ。



 では何故、中国がハイテク技術の塊ともいえる航空機を初め先進兵器産業のフロントランナーに躍り出たのか。かつて中国人留学生は米国の大学で留学し帰国して大手企業が採用し、技術移転に貢献したとされる。確かに中国の大学でも優秀な留学経験者がリーダーシップをとっている。しかしもうひとつは非合法の技術流出、技術漏洩の問題がある。技術諜報職員10万人を抱えるといわれる政府が公的機関、企業から盗み出す技術は膨大だ。


 米国、ドイツ、日本のハイテク企業からの技術流出がキャッチアップを容易にしているとみられる。かつてコンコルドの偽情報をロシアの技術スパイに盗み出させたため、Tu-144(別名コンコルドスキー)の墜落した、という噂があった。案外ハッキングによる技術漏洩に対抗するには、欠陥のある偽情報を盗み出させるという手が使えるかもしれない。