満足度ランキングでみる日本の技術力

Sept. 8, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 

 日本製品の国際競争力が低下している分野は電子産業のほとんど全てのカテゴリーに及ぶ。一方で精密機械分野には日本製品が圧倒的に支配し、顧客満足度が高い分野も存在する。逆に顧客が満足するから売れる、つまり顧客の目が高い分野では、価格や派手な販売戦略では一時的な躍進はあっても長続きしない、ということである。



 代表的なのが一眼レフの世界である。一眼レフは写真フイルム時代にレンズ交換ができるカメラのことで、海外で胸にぶら下げたカメラは日本人であることを証明していた。誰でも家のどこかにしまい込んでいるだろう。さてコンパクトデジタルカメラや携帯、スマホのカメラが写真フイルムに取って代わっていた頃、一眼レフも大きな変化を遂げていた。つまり写真フイルムを撮像素子で置き換え本体も金属部分を軽量樹脂で置き換え、驚くほどの軽量化を達成していた。



 高性能機種の当初のニーズはプロカメラマン達によるものだった。有名な戦場カメラマンのキャパや自然風景画像の天才アンセルアダムスを筆頭とするプロカメラマンの片腕は一眼レフであるが、軽量化や電子化による自動露出や自動フォーカス機能により女性を含めて一般のカメラ好きを虜にした。海外でも先進的な技術の製品が微妙に異なる特徴を持つ国内メーカーの製品は各々のファン層を持つ事になり、メーカーの共生が許された。

 2014年の米国でのデジタルカメラ顧客満足度調査の結果(J.D.パワーアジア・パシフィック)によれば、デジタル一眼フカメラはニコンDシリーズが1位。コンパクトデ ジタルカメラではカシオEXILIM ZOOM、キヤノンPowerShot SD、富士フイルムFinePix Fシリーズが各セグメントで首位となった。高級カメラ市場では日中関係が悪化する中国でも日本製品がランキングを独占する。日本製品を排斥するデモ隊の中国人がかつての日本人のように、これらの一眼レフカメラを胸からぶら下げていたりする。

 


 日本製品で顧客満足度が高い製品には自動車がある。筆者は日本製品排斥運動まっただ中の中国で、日本を攻撃するステッカーを張ったトヨタクラウンをみた。自動車ブランドの2014年版総合ランキング(米消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」の1位は2年連続でトヨタ自動車のレクサスで、上位5位のうち4ブランドを日本車が独占した。一眼レフ市場と顧客満足度については全く同じである。ちなみに現代自動車は16位と日韓の製造業に対する米消費者の評価の差が鮮明となった。

 

 

 このことは何を意味するのであろうか。技術力が高いというのは先進的な技術を投入するだけではない。日本企業は先進的な技術を顧客が扱いやすいレベルにわずかに「ダウングレード」して市場に出す。


 技術者が介入して技術をデフォルメするので、時に性能で争う場合には、足を引っ張る場合があるのだが、総合的な顧客満足度において圧倒的な結果を生み出すのである。低コスト市場は新興メーカーにまかせればやがては、自滅する。日本のメーカーは当面は従来の方針とDNAを受け継ぎ、辛抱すれば必ず結果がついてくるだろう。顧客はみるべきところをちゃんとみているからだ。