チェルノブイリは事故から38年が経過したが、今でも野生イノシシが放射能汚染されている。ドイツは森林が多く、野生イノシシが生息していて、写真のようにその肉は愛好家が多い。日本でも「ぼたん鍋」とも呼ばれるしし鍋ファンは年配に多い。若者ならさしずめ「もつ鍋」のように、普段食べる肉と異なる独特の味に魅かれるのであろう。イノシシ猟には猟銃の所持許可と狩猟免許が必要だが、それでも全国の山奥で猟が行われている。ドイツでも同じであるが、最近の調査で事情が変わった。
Saxony州では調査の結果1/3が放射能汚染で食用にできないことがわかった。野生イノシシは一方で、多くの住民には迷惑な存在だった。アウトバーンに飛び出して交通事故の原因になったり、住民を集団で襲う事があったからだ。
2010年にはベルリン市内で車椅子の男が襲われた有名な事件があったほどである。ドイツの「黒い森」シュヴァルツヴァルトは密集した樹木で黒くみえるほどであるのが語源であるが、国内線で空から見るとシュツットガルトやハンブルグでも街を離れると、まるでジャングルを飛んでいるようなものである。
Saxony州はチェルノブイリから700マイルも離れているが、チェルノブイリ上空に吹き飛ばされた放射性物質は遠くまで、運ばれてヨーロッパ各地を汚染した。地表に雨で落下した汚染物質は地面から徐々に深く沈み込む。
しかし野生イノシシは根っこを食べるので、放射能汚染が顕著だったのである。Saxony州は2012年から狩猟者は食用の肉を販売する前に放射線レベルを検査することが義務づけられていて600Bq/kg以下でないと販売できないようになった(注)。ちなみに販売できない場合は国から補助金がでる。年間の752頭の内297頭が基準値を超えた。専門家はあと50年はこのような状態が続くとみている。(Telegraph)
(注)日本の食品放射性物質の基準値は2014年から、Cs(Sr)で100Br/kgに設定されている。
追記
福島の場合には陸上汚染もさることながら、汚染物質が落下した太平洋の汚染と魚介類の生物濃縮が焦点となっている。核種のひとつであるCsは体内で特にSrのように骨に蓄積するということはないので,海水中のCs濃度が著しく高くない限り,非常に深刻ということはない。一旦体内に入った Cs
は大体70日ぐらいで排出される。したがって,偶々Cs濃度がちょっと高い魚を食べたとしてもあまり問題に考える必要はない。この点は,水俣病のHg汚染や PCB 汚染とは根本的に異なると思ってよい。ただ,Srは別である。これは一旦体内に入ったら半減期(30年)居続けると思わなければならない。福島の場合,拡散したSr汚染水を海に流すと問題になる可能性はある。