イスラム系移民受け入れの代償

Aug. 23, 2015

Photo: Valley News


シリアとアフリカから欧州に渡る難民と不法移民が、近い将来欧州を根幹から揺るがすことになりかねない。イスラム系移民のたちは欧州各国に分散して住みついても、独自の宗教、文化、そして仲間のつながりを捨てず現地に溶け込もうとしないからだ。


これまでも米国へのアジア系移民やメキシコ、プエリトリコ、南米からの移民が社会問題化したことはあったが、米国市民となり宗教や文化において新天地に溶け込んできた。例えば日系2世の米軍部隊は祖国に服従して勇敢に戦い、米国に貢献し社会的地位を築いた。


イスラム系移民の場合には受け入れてくれた国に恩義を感じて、改宗したり、現地の文化や慣習を受け入れることはない。年々増加する一方の移民が社会の人口構成で無視できなくなれば、必然的に差別や排斥運動が起きて社会が混乱する。現在欧州に起きている移民問題は欧州を弱体化させることは明らかである。ここであらためてアフリカ、中東から欧州に渡るイスラム系移民の現状を概観して、欧州が抱えるリスクを考察する。



Photo: The Land of Maps

 

2014年のシリア、エリトリアからの難民は上の図に示されるように、それぞれ42,320人、34,330人とアフリカ経由の欧州への難民の80%を占める。シリア難民は内戦によるもの。エリトリアはイエメンの対岸にあることで、シリア同様イエメンの内戦の直接的影響が大きいが、この国の圧政は20年以上続き、人権問題でイエメン内戦以前からスーダンへの難民が多かった。特に22万人に及ぶエリトリア難民の人身売買は深刻で、国連報告書やNGO人権団体が政府を糾弾していたことから、基本的人権を求めて欧州に渡ろうとする潜在的な移民希望者の存在が背景にあることも忘れてはならない。

 

難民たちは防衛のため集団で行動する。彼らはリビア、エジプトを横断すしてアフリカ北端の海岸に行き着くことができた人たちは、沈没寸前の船で欧州への裏玄関、ギリシャ経由のイタリアを目指す。いったんイタリアに上陸した移民たちの行き先はまちまちだがドイツが圧倒的に多い。主な行き先はドイツ、173,070人、スエーデン75,090人、イタリア63,660人、フランス59,030人、ハンガリー41,370人、英国31,260人。

 

移民に人気のある国は移民に寛容な政策をとっている国、またすでに移民が多く社会において目立つ存在でない国、である。ドイツは第二次大戦後に大量の移民を受け入れた。1950-1970年の20年間で200万人を超える移民がトルコ、ユーゴスラビアから流入して、工業発展を支えた。そのドイツですら正式に移民政策を認めて移民対策に予算をつけ、移民教育を徹底しだしたのは移民法が制定された2001年という。

 

フランスは国籍が国内で出生で与えられるためそうでない国民は「移民」と定義される。1999年の統計では移民は431万人で人口の7.4%で統計的に社会構成の一翼を担っている。移民の受け入れるかどうかは別に移民が社会で目立たない、生活しやすい国。リビアからの移民を乗せた船が沖合で沈没し400人以上が海に消えたイタリアも、近年の中東、アフリカ難民が上陸するため流動的なイスラム系移民が激増し、5日間で1万人が上陸している。

 

イタリアを訪れた観光客は移民の多さに驚くだろう。中でも周期的に活動するジプシーたちはスリや置き引きで社会問題化しているが、当局の取り締まりは甘い。すなわち移民が隠れるのに都合がよい社会であった。下の写真は市内の観光名所のひとつであるヴィットリオエマニエル二世紀念堂に面した道路を不法占拠してアラーに祈りを捧げるイスラム系移民たち。

 



Photo: Eye on The World


観光客に人気スポットを占拠するイスラム系移民たちは自分たちの宗教に熱心で受け入れた国の宗教や文化を一切排除し孤立化するが、各国政府は個人の自由の前に正面から取り組むことを避けてきた。しかしイスラム系移民の出生率は高く高齢化が進む欧州にあっては、人口増加の90%を占める。人口減少による経済の後退より、宗教と文化の寛容で生じる社会的混乱を犠牲にしても、移民による一時的な生産力を優先した欧州諸国は、時限爆弾を抱えているといえる。

 

欧州の移民受け入れ責任を拒否する国(スロバニア)の出現で、欧州連合の足並みが乱れたが、人口減少問題のために移民を暗に認めてきたことへの高い代償といえるだろう。移民の教育や改宗などやりたくない問題に手をつけないと手遅れになる。文化、宗教面で欧州の崩壊のリスクが高まっている。