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セントルイス連邦準備銀行のスティーブン・D・ウェリアムソン副総裁は、米連邦準備銀行の量的金融緩和政策に関しての検証レポート(White Paper)を発表している。そのなかで、「連邦銀行の最大の目標である、インフレ目標の達成と景気回復を量的金融緩和(QE)で達成できると断定する研究は私の知る限り、存在しない。QEはインフレを上げるには効果的ではない。」と指摘している。
S&P 500株価指数との相関関係
2009年以降のS&P 500株価指数の上昇は、米国連邦銀行のバランスシート(賃借対照表)上の資産の拡大と連動して伸びてきた。このことはドイツ銀行のジムリードも早くから指摘してきた。
量的金融緩和策が実施されてから、2009年に9,310億ドル(ほとんど国債)であった資産は今では4 兆4872億ドルにまで膨れあがっている。バランスシートの拡大を詳しくみてみると、2001〜 2008の間において45%拡大したのに対し、2008から今日までに383%拡大している。その間、米国株式は上昇を続けた。バランスシートが拡大している間、米国経済は6年間経済回復に向かっていると言われてきた。
米連邦銀行は民間金融機関から国債やリスク資産を買い取り、国民や企業に貸し付ける資金、金融機関が自由に使えるお金を増やしたのである。景気回復のための余剰資金は結果的には、住宅ローン、学生ローン、サブプライム自動車ローン、株式投資などのバブルをつくりあげた。民間金融機関が企業に貸し付けたうちの大半、23億ドルは自社株買いに使われてきた。つまり、量的金融緩和による経済回復、それを反映している株価は債務の拡大によるもので、実体経済の改善ではないのである。
Source: Deutsche
Bank, Bloomberg Financial
S&P 500が2009年3月に底値の666をつけた時、連邦銀行のバランスシートは2兆1000億ドルであった。同年の6月には「グレートリセッション」の終わりが告げられた。経済が不況でなければ、その後の5年間に連邦銀行のバランスシートが2倍も膨れあがったことを説明するのは難しい。S&P 500もこの間200%上昇している。
7年間続いた量的金融緩和のQE1, QE2, QE3は2014年10月に終了した。その後、連邦銀行のバランスシートの拡大はないと同時にS&P 500の上昇はほぼフラット傾向にあった。21日の株価下落により、S&P 500は2000を割り込み、量的金融緩和QE3を終了した時につけたレベルを下回った。
今後株価の下降圧力が続く経済要因はたくさんある。下落に歯止めをかけるには連邦銀行のQEの復活と金利利上げの延期政策しか残されていないが、果たしてQE 4に踏み切るのか?
QE 4を実施すれば、量的金融緩和の実体、つまり経済成長に貢献しない、株価を上げる効果しかないことが明らかとなる。
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