飢饉を救うVertical Farm

Aug. 17, 2015

Photo: REBELWITACAUSE 


クリーンルームde農業という記事で”Vertical Farm”についてかいた。


室内で栽培するVertical Farmの利点は品質・生産量が一定で管理しやすく、食糧不足問題に対する解決方法の一つと考えられている。世界的な食糧危機が異常気象と人口増大、紛争によって急激に加速している。TPPで苦戦を強いられる日本にとって、限られた農地面積というハンデイの中でお家芸のクリーンルームテクノロジーを農業に転用することは、日本の農業の救世主となり得るばかりか世界的な飢饉に対する対策となる。


日本ではすでに東北の半導体クリーンルームが農業に転用されている。福島県会津若松市において半導体工場のクリーンルームを転用し、大規模植物工場の実証事業が開始された。植物工場は2000m2の実装面積を持ち、低カリウム野菜を栽培する。低カリウム野菜を栽培する植物工場としては「国内最大級」となる。このような動きは世界各地でも同様で多くの実証実験が計画されているが、最近、水栽培の限界を超えてレタスへの応用が注目を浴びている。


 野菜工場事業を展開する企業、「スプレッド」が、栽培を完全自動化したレタス製造工場を、けいはんな学研都市内に建設することを決めた。同社は2017年夏ごろから出荷を開始し、生産規模は3万個/日、年間売り上げは約10億円を見込んでいる。


 同社はすでにに世界最大級の2万個/日の規模のレタス製造工場を有している。新しい工場はこれを上回る規模となり、世界一の座につくと同時に年間生産量は1,000万個の大規模生産を行うという。注目される点は施設内に工場や研究開発、実験室を建設し栽培技術開発を並行して進めることである。というのもVertical Farmはクリーンな環境で栽培を完全自動化するハイテク農業であるからで、今後の技術改良で応用範囲が拡大できるためである。


 レタスの栽培に専用のLED照明や精密に制御された空調システムを採用する。これによって、栽培のエネルギーコストを削減すると同時に育苗から収穫までの栽培工程を自動化することで、人件費も大幅削減できる。さらに栽培に使う水をリサイクル可能にする夢のVertical Farmとなる。農業人口の減少で追い込まれた日本の農業を救うのは半導体産業のハイテクだとしたら、過剰投資とされた半導体関連設備で培われた技術なのかもしれない。


 Vertical Farmにこだわるもうひとつの重要な理由は、TPPで輸入されることになる膨大なGMO農作物を摂取しなくて済むこと、農家がアメリカのようにラウンドアップ漬けにされないための防衛策となるからだ。