サービスチャージ法規制~チップは客の意思で

03.05.2016

Photo: The Telegraph

 

英国政府はレストランで客にサービス料金(チップ)を強要できなくなる法律を検討している。チップの額の計算方法が曖昧で収入の透明性が低く、誰の収入になるかが不明で客が混乱する慣習が見直されるかもしれない。法案が通れば客はその意思でチップを払う合理的なシステムとなる。

 

すでに欧州のタクシーではチップ込み(Gratuity included)(注1)として請求されることが多くなった。これは客にとってはチップの金額を決めるのに悩む必要はなく面倒ではないのだが、サービスの質に関わらずサービス料金を上乗せされることが問題にされることも多かった。

 

(注1)料金を払う時に”Included?”と言って確認すれば良い。”Included”の場合は領収書に内訳が記載されている。

 

失われるチップの意味 

レストランのチップは請求額の10-15%とされる。サービスの質によっては感謝を込めてこれに上乗せしたり、逆に悪ければ最低線の10%にすることができるが、サービス料金が報酬となっている場合には、客は拒否することができない。店によってはタクシーのように請求書に”Included”としてサービス料金を含めるところもあり、その場合、客が気づかずに(注2)テーブルにチップを置けば二重にサービス料金を支払うことになる。

 

(注2)請求額にサービス料金が含まれているかどうかは請求書に明記してあるが、暗い室内で請求書を確認できないこともあり、店を出た後で気がついても遅い。請求書に含まれている場合でも客がテーブルに置くチップは「良質のサービスに対する感謝の意」と解釈される。ホテル内レストランの食事をルームチャージにつける場合、チップは通常含まれることが多いが、テーブルにチップを置く客も多い。

 

 

Credit: wait but why

 

サービス料金法案で何が起こるか

クレジットカード払いでもサービス料金を別途加えるかどうかの選択肢があるが、その場合にも了承すれば二重払いとなる。検討されている新法律ではレストランは「本来の意味である」チップを客の裁量権とし強要できないことになる。一方でチップ制度を廃止することも検討されている。つまり10-15%という数値的な約束事をやめれば、理屈に合わない支出を嫌う若い世代はチップ制度の崩壊を歓迎するだろう。

 

しかしこのことは逆にサービス料金として店側が請求できない代わりに、請求内訳からサービス料金の項目が消えることで、透明性が失われることになる。店側は10—15%にこだわらずにサービス料金を請求できるからだ。その意味では10-15%の中で裁量権は消費者にある現行体制を望む人が多くなるかもしれない。

 

 

サービス料金の明朗化の意味

昨年、チェーン・レストランがサービス料金収入を違な所得とした事件が発覚した。政府はこの法律で店がサービス料金をどのように使うのかを把握できるようになる意味もある。つまり政府が税金の対象とする店の収入を把握できるということになる。

 

政府はサービス料金はそれを提供する人々のものであり、店が搾取することは許されないと主張する。チップ制度の廃止で逆に不透明な請求をされる恐れがある。消費者は店がチップの搾取を止めることには肯定的だが、清楚廃止で不都合な請求に結びつくことには反対である。

 

レストラン同士の競争が激しくなり、サービス料金収入を搾取する店が増えたことを規制したい政府の意向がある。しかしサービス料金による収入を把握して適切に課税するために透明化を徹底したいという思惑も見える。背景には安価な食事を提供するデフレ・ビジネス(チェーン店)の増加がある。

 

 

ニューヨーク州の見解

世界でもっともチップ制度が行き渡り平均額も20%と他を引き離すニューヨーク州で、は2012年にサービス料金への課税に関して以下のような方針を打ち出した。

 

客が自発的に感謝の気持ちとして渡すチップは課税対象にならない。

店が客にチップを強要する場合には非課税としない。

 

ニューヨークが店の搾取に厳しい理由は、チップに依存するサービス提供者の権利が保障sれているからである。