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イタリアの銀行の不良債権問題と今後の具体的な対応策がまとまらないことから、預金者や投資家、他の欧州大手銀行などの懸念が高まっている。ドイツ銀行の主任エコノミスト、ダービット・フォルカーツランダウ氏は10日に、イタリア銀行の資本増強のために緊急に1500億ユーロの救済金の必要性を訴えた。早急に対応がなければ、銀行危機はイタリアだけに止まらず、その影響は他の欧州銀行に伝播(コンテイジョン)する可能性が高いことを警告した。
警告の背景にあるのが、銀行が保有する国債による国家財政と銀行財務の「負の連鎖」である。国家財政が悪化すれば、国債の価値の下落で銀行財務が悪化する。銀行財務が悪化すれば、国家による銀行救済を通じて国家財政が悪化するといった悪循環が「負の連鎖」である。この「負の連鎖」をドイツ銀行は警戒しているのである。
ギリシャ破綻の教訓
ギリシャ破綻危機の際、銀行救済を実施していた国家がデフォルトしたことで、大量に国債を保有していたギリシャの銀行の財務状態がさらに悪化、破綻危機が起きた。その時の教訓から、銀行財務から国家財政への悪影響、国家財政から銀行財務への悪影響などに対処するための取り組みは進められてきた。
しかし、格付け会社のスタンダード&プアーズによると、欧州銀行の自国債の保有率は2008年以降拡大している。2008年に3,550億ユーロであった国債の保有残高は今では7910億ユーロまで増加している。「負の連鎖」が起きやすい状況にあることを示している。
イタリア国債の行方
イタリアの場合、イタリアの銀行以外にイタリア国債を最も多く保有しているのが、フランスの銀行でそれに続くのが、ドイツの銀行である。フランスの銀行は2,500億ユーロ以上、ドイツの銀行は832億ユーロ相当のイタリア国債を保有している。なかでも、ドイツ銀行は単独で117億ユーロのイタリア国債を保有している。日本の銀行も276億ユーロ相当のイタリア国債を保有していると思われる。
新たなEU危機となる負の連鎖
イタリアの銀行の不良債権による破綻危機はEU内に「負の連鎖」を引き起こすリスクである。危機的状況にあるドイツ銀行にとって、国債下落による損失は破綻に追い込まれるきっかけになりかねない。イタリアの銀行が破綻すれば、イタリア国債は大量に売却される。「負の連鎖」が始まり、他の銀行へのコンテイジョンが始まる。そうなればイタリア国債を保有する全ての銀行が影響を受け、銀行財務への悪影響は避けられない状況になる。