Photo: The Liberty BEACON
米国議会で9/11でサウジアラビア政府が関与したことを示す情報公開について論争が行われているが、サウジアラビアは米国外交戦略の失敗と政治力の弱体化が中東における混乱や不安を引き起こしたと主張している。情報公開を巡る一連の騒動は、サウジアラビアへの安全保障の見返りに、すべての原油をドル建て決済とするペトロダラー体制の崩壊の始まりが背景にある。
国家主権免除が適応されない
9/11テロに関する調査委員会の最終報告書から、28ページの「トップシークレット」と刻印されている未公開の28ページを巡り、議会でその公開に関する法案が議論されている。「テロ行為の支援者に対する正義案」(Justice Against Sponsors of Terrorism Act: JASTA)と呼ばれる法案には、28ページの公開だけでなく、9/11の犠牲者の遺族に、テロに関与した個人や国を提訴できる法案が含まれている。国際法上、外国国家が他の国の民事裁判権に服することが免除される。JASTA法下では、国家主権免除が採用されないのである。
法律になれば、犠牲者の遺族はサウジアラビアと関与していた個人に対し損害賠償を求める訴訟ができる。しかし、サウジアラビアだけでなく米国政府、ブッシュ元大統領やブッシュ政権内のネオコン閣僚への告訴も可能となる。また、法律を拡大解釈すると、米国が海外で関与している紛争や戦争、武力活動に対して、海外から米国を告訴することも可能とする道筋をつくることになる。
特に、イラク、リビア、エジプト、シリアといった中東での反政府戦力への支援で、政権の転覆や多くの民間人の犠牲をもたらした責任で米国に被害賠償を求める動きに発展していくことが考えられる。そのため、議会で法案が成立すれば、オバマ大統領は拒否権を行使すると明らかにしている。
テロ組織の支援を認める
議会で法案成立が進められているなか、サウジアラビア政府は法案成立を阻止するため、保有する米国債や証券を含む7,500億ドルの米国資産の売却の意図を示した。この脅しに対し、ベン・ローズ国家安全保障問題福補佐官は、
『アルカーイダの支援はサウジアラビア政府の政策ではなかったが、サウジアラビアには過激派組織を直接支援する資産家が数人いる。後にアルカーイダとなる過激派組織に育成資金とも言える多額な資金がサウジアラビア経由で集まったのである。』
とサウジアラビア政府の直接関与を否定した。しかし、サウジアラビア政府は複数の資産家が過激派組織に資金を提供していたことを把握していたことを認めた。