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4月3日にドイツのミュンヘンを本拠とするSuddeutsche Zeitung紙は、パナマのモサック・フォンセカ法律事務所の内部告発により入手した「パナマ文書」(Panama Papers)を報道した。世界の1%の富裕層、企業、金融機関、犯罪組織などがモサック・フォンセカ法律事務所を通じて、オフショア法人を利用して資金運用、資産隠し、脱税や課税の捜査の回避、資金洗浄を行ってきたかを暴露した情報である。しかし、その中にはアメリカを対象とする情報が公表対象となっていないことから、「パナマ文書」の公表のタイミングと目的に疑問が向けられる。
Suddeutsche Zeitung紙は2015年に金銭報酬を含め一切の報酬を求めない匿名の内部告発者により、情報が提供された。その後、調査ジャーナリストの国際コンソーシアム(International Consortium of Investigative Journalists: ICIJ)と協力、世界80カ国、100以上のニュースメディアから400人のジャーナリストと共有して「パナマ文書」の内容調査と裏付け調査を行ってきた。今後、その内容が段階的に公表される予定である。
法律事務所「モサック・フォンセカ」とは
モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)はパナマに本拠を置く、スイス、キプロスやヴァージン諸島などのタックス・ヘイヴンを含む世界42カ国と従業員600人のオフショア・サービスの提供を専門とする法律事務所である。世界中でオフショア法人を設立し、40年間もの間顧客の脱税・資産管理と資金洗浄を行ってきたとされる。
モサック・フォンセカ法律事務所は300,000以上の企業、財団、投資信託、銀行、などの法人を顧客としている。今回の「パナマ文書」には、214.000の法人、12人の現職国家首脳を含む143人の政治家の他にマフィア、日本のヤクザ、武器商人、麻薬売買人、ペドファル、FIFA役員、セレブ、スポーツ選手、著名人が含まれている。
パナマ文書の衝撃
約2年前から犯罪組織のつながりで、ドイツ当局は捜査を進めていた。その時も内部告発による対象顧客は数百社で古いデータに基づく機密情報であった。ドイツ当局は情報をもとにドイツのコメルツ銀行、HSHノルトバンク、ヒポ・フェラインス銀行などがモサック・フォンセカとの関わりを捜査、各銀行は2,000万ユーロの罰金が課せられた。
2013年のエドワード・スノーデンが暴露したNSAによる盗聴の実態を明かした機密文章を上回る、1,150万ファイルで、そのデータサイズは2.6TB、史上最大規模の機密文章のリークである。データには、eメール、pdfファイル、フォトファイルやモサック・フォンセカ法律義務所の内部データバンクの情報が含まれ、1970年代から2016 年の第1四半期の期間を対象としている。
「パナマ文書」には、アメリカ、カナダ、欧州の一部、オーストラリア、韓国、日本などが対象国には含まれていない。まるで、アメリカとその同盟国が除外されたようにも見えるが、その真相は不明である。
Source: Wikimedia: Countries implicated in Panama Papers
アメリカが含まれていない理由
主な顧客である欧米、特にアメリカの企業や富裕層がモサック・フォンセカ法律義務所を利用した情報は公表されていない。「パナマ文書」のデータを入手できる、英国ガーディアン紙も大半の情報は機密にされると声明を出している。
その背景にあるのが、「パナマ文書」の公表にあたっている調査ジャーナリストの国際コンソーシアム(ICIJ)が米センター・フォー・パブリック・インテグリティ(The Center for Public Integrity: CPI)により形成、活動資金の提供を受けているからである。そうして、CPIに資金提供しているのが、フォード財団、カーネギー基金、ロックフェラー家基金、W.K.ケロッグ財団、ヒューレット財団やソロスが設立したオープンソサエティ財団である。
Source: ICIJ homepage: ICIJ supporters
腐敗した政治に閉塞感を募らせる民衆はいつしかロビンフッド的な社会正義を待ち望むようになる。「パナマ文書」は世界中の非合法組織、腐敗した指導者、強欲な富裕層に「正義の鉄槌」を下すものとして、世界中のジャーナリストやメデイアの注目を集めている。しかし内容を調べてみると(期待に反して)その内容はアメリカに都合が悪い内容が除かれたもので、「反米諸国」の勢力を低下させるための意図的なリークともとれる。