Photo: incyprus
革命記念日(7月14日)はパリ祭で知られるフランス国民が街に繰り出して独立を祝う国民的行事である。1789年7月14日のフランス革命の発端となったバスチーユ監獄襲撃にちなんで共和国成立を祝う。フランス人の誰もが祝うこの日に、南フランスの世界的に有名な地中海リゾート地ニースの花火見物客を狙った大型トラックと銃器を使ったテロで84名が犠牲となった。
トラックで市民にトラックで突っ込んだのはチュニジア生まれのフランス人ISテロリスト、モハメド・ボウレル(31歳)だった。ニース生まれの犯人は25トントラックをジグザグに走らせ市民を次々と跳ね、停車すると降りて銃を乱射し銃撃戦の開始とともに射殺された。昨年のパリ同時多発テロで130名の死者を出した記憶も消え去らないフランスは、再びテロの恐怖に追い込まれた。
残された子供を含む多数の遺体に悲しみに打ちひしがれた家族が寄り添う光景は残酷なテロの現実を世界に届けることとなった。先にISの出した警告、「世界中がテロ標的になる」という予告通りの犯行に、国内治安総局はさらなるテロ」を警戒し、解除していた対テロ警戒体制を発動した。英国とアイスランドのサッカーの試合が予定されていた6月27日にニースのショッピングセンターでは爆弾騒ぎで2,000人が避難する騒ぎがあったばかりだった。
7月に入って米国フロリダのナイトクラブ襲撃事件で49名が死亡、バングラデイシュのレストランで日本人7名を含む20名が死亡、またダラスでは銃乱射で警官5名が殉職しており、テロ頻度が急激に高まっている。今回のテロの特徴はISメンバーを潜入させて攻撃計画を時間をかけて練った犯行でなく、地元の若者を使ってトラックの暴走という新しい無差別テロを実行した点にある。
トラックには手榴弾や重火器が積まれており、複数の犯行であればさらに多くの犠牲者が出るところであった。犯人は2日前にトラックをレンタしていたが、犯行直前まで9時間にわたって道路に駐車していた。その際に犯人は「アイスクリーム配達に行く途中」だとして職質を切り抜けた。しかし暴力と窃盗歴があったにもかかわらず、何故職質で逮捕できなかったか疑問も多い。
というのも警官がトラックをそのまま駐車させていたことで人々が仕掛け花火の終了とともにごった返す瞬間を狙った犯行を許す結果となったからである。市民の多くは花火見物で気をとられていたとしても、俊敏な行動で自己防衛能力の高いフランス人の犠牲がこれほど多かったことは、トラック暴走をテロとして予想しなかったためである。地中海諸国でテロリスクの高い国は下に示すフランス、スペイン、チュニジア、トルコ、エジプトとされていた。
Source: Mirror
ISは今後もあらゆる手段でテロを継続すると警告している。戦闘員を欧州に溢れる移民たちに紛れ込ませるのでなく、土地勘のある地元の若者をリクルートしこれまでにない方法で犯行に及ぶようになった。テロリスト侵入から国境を守り他国民の入国を規制する従来の対テロ対策は無力化したと言える。対テロで最も重要なのは情報である。内部情報をいち早く入手して先手を打つことが必要だが、今回の事件では警官の職質が効果があることを暗に示している。個人の権利とテロリスクを天秤にかけざるを得ないが、そのことで国内混乱を招くとしたら、それこそがISが望むものである。