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日銀は外国金融市場では「東京のクジラ」と呼ばれている。その由来は、金融緩和策のETF買い入れで、日銀が日経平均株価の約9割の上場企業の株を保有する大株主であるからである。株式市場におけるその存在と影響力は拡大を続ける一方である。
ロンドンのクジラ事件
米JPモルガン・チェースのロンドン事務所に勤めていたトレーダー(ブルーノ・イクシル)が、2012年にデリバティブ取引で58億ドルの損失を出した事件である。イクシル氏のウォール街における影響力の大きさから、取引で株価指数を動かすとも言われ、「ロンドンのクジラ」と呼ばれていた。
「東京のクジラ」
ブルームバーグによると、日経平均株価を構成する約9割(225銘柄のうち200社)の企業で、日銀は保有率上位10位内で実質的な大株主である。日銀の指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れは3月時点で時価総額8.6兆円、日本株ETF全体の55%に当たる。今後も追加緩和策で保有率の拡大が予想される。上場企業の株式に対する影響力を強めており、日本では最大のヘッジファンドになりつつあることから、世界から日銀は「東京のクジラ」と呼ばれている。
リーマン・ショック後の量的金融緩和策で始まった日限によるETFの買い入れ枠は、当初の4,500億円から1兆円に増額、2014年には3兆円に拡大、さらに4月から新枠を使い1日12億円の買い入れを行っている。日銀は需給面で日経を支えてきたのである。
日銀の株式保有率が7%以上で上位3位以内の大株主である企業のなかには、テルモ、ヤマハ、大和ハウス工業、住友不動産、三菱マテリアル、ミツミ電気、ファーストリテイリング、アドバンテスト、太陽誘電などがある。
日銀による株式保有の問題点
株価下落を防ぐ、金融市場の安定化を図るための日銀によるETF買い入れ政策には、いつまで買い続けるのか、また出口戦略がないことが問題となる。日本を含め世界経済が低迷しているなか、さらなる追加緩和策が行われば、日銀保有額は拡大する。日銀が企業の筆頭株主になる場合も想定できる。
日銀が買い入れを長期間続けることで、株価がファンダメンタルズからかけ離れるリスク(株価の正当なバリュエーションができなくなる)が高くなる。さらに、金利の正常化と同様に、いつ日銀が買い入れを終了するのかの不透明感が払拭できない。また、終了した場合企業の株価や日経にどのような影響を残すのかが懸念され、金融システム全体への脅威となりつつある。