米国債務バブルの崩壊への予兆

23.05.2016

Photo: Profit Confidential

 

 米国家計債務残高2015年に、過去最大の121200億ドルに達した。クレジット・カード支払い、住宅ローン、学生ローン、自動車ローンの残高は全て一時期より増加率は低いが増加を続けている。なかでも、危機的状況にあるのが自動車ローンである。その理由は、2008年の住宅サブプライム危機と同じことが自動車ローンでも起きているからである。その他にも、商工業向け融資と農地・農業向け融資の延滞率や貸し倒れ率の増加は、経済が景気後退期に入っていることを表している。

 

 景気が好調の時は、融資の返済延滞率や貸し倒れ率が低下するにの対し、景気の悪化で上昇する。家計債務だけでなく、企業債務の債務残高や融資の延滞率と貸し倒れ率が危機的なレベルまで達している。連邦政府、国民、企業と債務バブルは崩壊に向かっている。

 

サブプライム自動車ローン

 米国自動車産業で「ミニ・ブーム」が起きたのは、好調な消費力があったからである。その背景には、サブプライム(信用力の低い個人向け)自動車ローンの増加がある。2015年には新規自動車ローンの23.6%がサブプライムで、金額は約2,000億ドルにのぼる。

 

 2008年の住宅サブプライムの破綻の時と同じように、大手金融機関はサブプライム自動車ローンを格付けの高い金融商品に組み入れ、証券化したものが投資家に販売されたのである。サブプライム自動車ローンの滞納率は2009年以来の最高水準に達しており、上昇傾向になる。ローンの焦げ付けも1月には12%2月には13%と大幅に上昇している。サブプライム自動車ローンの破綻が起きてもおかしくないレベルまで達している。

 

 

商工業向け融資

 リーマン・ショックにより上昇を続けていた金融機関の商工業向け融資の返済延滞と貸し倒れによる損害金は2014年に117億ドルにまで低下した。しかし2016年第1四半期から返済延滞と貸し倒れによる損害金は再び上昇、2014年から上昇し、278億ドルとなった。これは景気後退時の2008年7月と同じ水準である。企業が借り入れた債務の返済が難しくなってきていることを示す。現在の経済状況の悪化が深刻化するにしたがって、さらに上昇する傾向にある。

 

Source: Board of Governors of the Federal Reserve

 

上のグラフの影の部分は不況を示している。2016年に入って急激な上昇が続いていることに注意して欲しい。

 

 

農地・農業融資

 農業商品価格の下落で農業所得は減少、農家による返済延滞率と貸し倒れ率が不況時と同じ水準に達している。農地融資と農業融資の返済延滞や貸し倒れによる融資損害金は半年で37%108%上昇、総額26.9億ドルにまで膨れあがった。農地・農業融資は主に地域や中小規模の金融機関が行っている。中小金融機関の破綻といった深刻な問題に発展していく予兆である。

Source: Board of Governors of the Federal Reserve

 

Source: Board of Governors of the Federal Reserve