Photo: Future Circular Collider
世界最大の円形加速器といえば、周長27km、エネルギー13TeVのLHC(Large Hadron Collider)である。欧州はその次の計画としてより大型のハドロン衝突リング(Future Circular Collider, FCC)を推進する。現在は検討の段階にあるがLHCの成功により欧州が中心になって建設に踏み切る可能性が高くなった。
FCCは新たに周長100kmに及ぶトンネルをlHCの側に建設して設置される(下の図)円形加速器で、エネルギー100TeVでおよそLHCの7倍、周長で4倍である。
Source: tunnel talk
LHCの衝突実験で用いるハドロンは陽子と中性子(両方ともハドロン、厳密にはバリオン)である。FCCは陽子―陽子衝突実験を行う他、同じトンネルに設置する高輝度電子―陽電子衝突実験とレプトンーハドロン衝突実験も含まれる。
FCCの研究開発項目には、加速器だけではなくインフラ、検出器、データ解析など広範囲の周辺分野の開発を含む。研究開発の中心課題は超伝導磁石の開発である。そのほかにハドロン衝突時のバーストを検出できる高速検出器や超伝導加速空洞も開発する。FCC国際共同研究チームはCERNがホストとなり2018年に概念設計と建設コスト作成を予定し、26か国75研究所からから研究開発チームが組織される。
日本が主導的に進める国際共同の直線加速器ILCは全長30kmでエネルギーはFCCより低い電子―陽電子衝突実験加速器で、米国が強い関心を示している。こちらは日米の科学技術協力で進み出せば、欧州のFCCとの競合する。米国や日本も欧州も中国経済の減速の影響を免れない中で、欧州はLHCの延長線上でリスクの少ないFCCに自信を持って臨む。