Photo: CBC News
2016年2月12日、米国の重力波望遠鏡LIGOの国際研究チームは重力波の検出に成功したと発表した。今回検出された重力波は2つのブラックホールが引き寄せあい合体して生じたとされている。さらに数ヶ月後に観測結果が再度、確認されて重力波発見の確証が得られた。さらに検出系の改良で次回の観測では最大8個の重力波を観測することが期待される。
重力波の観測には超高感度のレーザー干渉計が必要となり、観測が可能な米国のAdvanced LIGO、欧州のAdvanced VIRGO、日本のKAGRAの三箇所で観測が行われていた。重力波の観測で銀河中心や星の内部で起きている現象を通してブラックホールの誕生の観測、宇宙の起源に関する知見が得られると期待されている。
Source: Ligo Scientific Collaboration
レーザー干渉計の観測感度は検出系に依存しているが、このほどスタンフォード大学の放射光施設SSRLの強力なX線を用いて反射鏡の表面コート材料の構造を調べて最適化することで検出能力を倍増させることができるという。次からの観測では数百の重力波が観測されると期待されている。
LIGOは3,058km離れた観測システム2か所に設置される。その検出系の感度は反射鏡のコート材の原子位置の揺らぎ(熱振動)にまで依存することになる。アモルファス5酸化タンタル(Ta2O5)をコート材料とすれば熱振動によるノイズを抑えられることは経験的にわかっていた。研究チームは放射光を使ってそのメカニズムを調べた。Ta2O5は下に示すように密度の波長依存性が小さいため薄膜として導波路表面コートに用いられることが多い。
Source: sensors
現在、研究結果を用いて反射鏡コートの最適化が行われており、6カ月間予定されている次回のLIGO稼動、までにイベント観測レートを倍になり6個から8個の重力波を観測することができることになる。老朽化しつつあるSSRLは今回の成果で次期マシン予算獲得に弾みがつくと同時に、LIGOが拍車をかけVIRGOやKAGRAを引き離しにかかったとみられる。