Photo: The National Business
スイスに世界で最も長く地下深い列車トンネル(ゴサードトンネル)が17年の建設期間と120億ドル(日本円で約1兆3000億円)の経費をかけてこのほど完成した。このトンネルの完成で欧州のロジステイクスは一変するといわれている。というのもアルプス山脈がローマ時代から、欧州の交易に立ちはだかる最大の難関であったからだ。
中世には山道をいくロバが輸送の主役であったが、事故が多く冬場は唯一の交易ルートも閉ざされた。フランスからイタリア側に入るにはアルプストンネルを車で通るしか方法がない。列車輸送のネックポイントがゴサードトンネルなのである。トンネルによって最大貨物輸送量は1日あたり377,000トンが可能となる。
たとえばイタリア産オリーブオイルをオランダに運ぶには車でアルプストンネルを越える。中国やインドからの物流もそうしなければならなかった。これまでは大西洋を通ってロッテルダム港まで運ぶ必要があったが、これからローマやザグレブまでですむ。
トンネル掘削はアルプスが硬い岩盤のため至難の技である。計画自体は1940年代から進められてきたが、スイス国民が建設計画に賛成したのは1992年のことである。建設に使われたのは直径10mの掘削機。調子が良ければ1日に40m(世界記録)掘削できたが全体で400mの掘削距離を貫通させるのには、想像しない時間を要した。2,000人の労働者が毎日掘削し続けて17年後にトンネルは完成した。
ゴサードトンネルの全長は57.5kmとなり1988年に完成した青函トンネルの53.9kmを抜いて世界一位となった。ちなみにドーバー海峡を結ぶ英仏トンネルが50.5kmで第3位である。トンネルの欧州全体への影響の大きさにドイツ、フランス雨、イタリア各国の首脳も完成披露に駆けつけた。トンネルは衝突の危険がない上下線別々の2本からなる。
このため列車はトンネル内で減速せず250km/hの速度で運行が可能となった。これまでのアルプストンネルが迂回しながらのカーブの多いものであったが、ゴサードトンネルはチューリッヒからルガーノまで直線で結ばれる。
Source: BBC News