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モバイル機器もEVもバッテリー性能によって使い勝手が左右される。先端を行くのはリチウムイオンバッテリーだが、それでもその寿命は300-500回の充放電サイクルに過ぎない。ナノワイヤーを用いたバッテリーは数千回の充電に耐え寿命が飛躍的に向上するため、研究開発が精力的に進められている。
カリフォルニア大学アーバイン分校の研究チームはナノワイヤーを金属コーテイングした新型バッテリーを開発した(ACS Energy Letters, 2016, 1, 57)。このバッテリーは長寿命でモバイル機器やEVの新展開につながると期待されている。
ナノワイヤーは髪の毛より細炒め表面積が大きい。このため電極面積を増やすことができるようになり、電極反応で生じる起電力と電流が大幅に向上する。しかしこれまではセル中に組み込むと、充放電を多数繰り返すと構造がもろくなり電極に亀裂が入ることが欠点であった。
カリフォルニア大の研究チームは金線の表面を酸化マンガンでコーテイングして、300nm径の微細なナノワイヤーを作理、PMMA(注1)ゲルで被覆した。PMMZゲルなしでは2,000-8,000充放電サイクルが限界だったが、ゲルで覆うことで安定化し200,000サイクルの充放電が可能になった。
(注1)Polimethysl-methacrylate(ポリメタクリル酸メチル)。アクリル樹脂として知られる代表的な合成樹脂。ここでは金属酸化物表面を保護することで安定化することができた。
Credit: ACS Energy Letters
これまでのバッテリーでは7,000回を超えると電極表面が損傷していたが、新型ナノワイヤーバッテリーでは充放電により静電容量に変化が見られないことから、充放電サイクルで機械的な損傷(亀裂)がないことが確かめられた。
ナノワイヤーを使ったバッテリーの開発は他にも廃棄物をリサイクルして製造する研究も行われており、寿命の長い高性能バッッテリーが実用化される日も近い。