メガシテイ北京~人口1億のインパクト

07.07.2016

Photo: New York Times

 

35年後の2050年に世界人口が9億人を超える。世界の都会人口は50%から80%に増えると予測されている。中国政府は地方都市に農地から農民を移動させるために高層アパート建設で不動産バブルを招いた。10兆ドル(日本円で約120兆円)の予算を投入して、北京市は2030年までに5,700万人が居住する周辺の9都市と併合し、世界最大のメガシテイ(人口13千万人)が誕生する。

 

肥沃な珠江デルタに位置する9都市は1990年代に工業生産の中心となったが同時に、史上最大となる農地から都市部への人口移動にもなった。9都市は200万から1400万人の人口を有し、世界銀行の調査では珠江デルタは東京を抜いて世界最大の都市部を形成する。

 

 

Source: theday.co.uk

 

この20年間に農業から工業に産業構造がシフトするのに伴って数千万人が農地から都会に移り住んだ。2008年に北京市は単独でメガシテイとなる構想を発表した。都市化で不動産バブルが生まれたが2008年の金融危機の景気対策となり、世界経済の危機的状況を救うことになった。しかし不動産バブルが減速すると、政府も建設ラッシュの行き過ぎを認め規制せざるを得なくなった。

 

 

それでも政府は北京メガシテイ構想に周辺の2都市を加え人口13000万の世界最大のメガシテイを目指した。いわゆるJingJinJi計画(注1)である。昨年、中国政府は環境保全と汚職防止を理由に17の工事計画(総経費176億ドル(日本円で約20兆円)をキャンセルした。それでも中国全土に建設した高層アパートの6千万戸は空家のままである。不動産事業がGDP25-30%の中国では製造業の復活がなければ成長を不動産業に頼るしかない。2015年以降、減速しつつある中国のGDPを押し上げたのは、都市部の建設工事であった。

 

(注1BeijingTianjinHebei3都市を指す。

  

Source: The Telegraph

 

農地から都市部への人口移動は中国のみならず一般的な傾向である。人口のほとんどが都市部に集中すると、食料、飲料水そしてエネルギー不足が深刻化する。そのため2050年までに都市部を中心にエネルギー需要は倍増し、農産物も倍近く増産が必要となる。

 

しかし農地には工場が立ち並び農業人口は都市部に移動しているので、農業生産が追いつかない。都市部はヒートアイランド化し車で溢れかえり、排気ガスによる環境汚染で健康被害が多発する。都市部に人口が集中することの弊害に政府はやがて気付くことになる。メガシテイ北京が予想される深刻な問題をどのように解決するのだろうか。