レーザーを埋め込んだシリコンフォトニクスチップ

07.06.2016

Photo: extremetech

 

レーザーをICチップに埋め込むことは30年にわたってフォトニクス研究者の夢であったが、このほどシリコン基盤にレーザーを埋め込む技術が開発された。レーザーを組み込んだフォトニクスチップはすでに存在するが、データ送受信用のレーザーの埋め込みには、多くの難関があった。香港科学技術大学の研究チームはカリフォルニア大学サンタバーバラ分校、サンデイア国立研究所、ハーバード大学の研究者と共同でレーザー波長以下の加工精度でレーザーを埋め込む技術を開発した。

 

レーザーを直接、演算素子に結合することによって多量のデータを直接、演算の入出力とできるので、より低電力で高性能の演算が可能となる。そのためフォトニクスとエレクトロニクスの融合が、将来のデバイス設計に重要なテクノロジーとなるため、各国の研究機関・大学で研究開発が行われていた。

 

高速演算には集積度を上げる必要があり、そうするとノイズや発熱のため純粋な電子回路では限界がある。フォトニクスは発熱やノイズの問題がないため将来の高性能演算素子として期待されている。さらに光の扱える送受信データ量は電子より多いので、演算素子に光ケーブルを直結するアイデアが生まれた。下の図でOptical Sourceとしてレーザーを組み込むことで外部のレーザーを光ケーブルで演算素子I/Oに繋ぐ必要がなくなる。

 

 

Source: Fujitsu

 

シリコンチップに埋め込まれたレーザーはオンチップ光源としての他に、データ演算やセンサーにも利用できる。開発された技術ではレーザーをシリコン基盤に製造プロセスのなかで作り込むことができる。

 

開発されたオンチップレーザーの閾値(電圧)は低いので、回路の電源で動作ができる。研究チームは10年以内に市販チップに組み込むことができるとしている。発熱により電子回路の演算チップにおけるムーアの法則は破綻したが、フォトニクスチップを用いれば、発熱の限界とノイズの問題はクリアできるので、将来の演算素子の能力は一層、向上するだろう。

 

オンチップレーザーはこれまでにも近赤外でミクロンスケールのものが報告されているが、最先端のスケールは3nmになる見込みでさらに微細化が必要だ。