ロールス・ロイス社の未来操船システム

.06.2016

Photo: Rolls-Royce

 

未来的な貨物船コンセプトを提案しているロールス・ロイス社はタグボートや無人貨物船の操舵システムなどの操船技術の近代化に取り組んでいる。このほど無人貨物船の陸揚げのためのホログラフイック操舵システムを有する船舶操舵支援システムFuture Operation Concept: OXを発表した。

 

ISに無人宇宙船がドッキングする際のように、無人貨物船が岸壁に近づき、停泊して陸揚げの作業ができるまでには、精密な接岸作業が必要となる。このために遠隔モニターで位置を精密に制御する際、操舵室で操舵するようなVR画像で行う。

 

 

航空機に始まる自動運転技術は一般車の公道走行が現実化するほどになっているが、海運業界でも航行中の自動運転が普及し熟練した船員に頼らず接岸作業を自動化して安全性を高める研究開発が進められている。

 

ロールス・ロイス社は7-14人の制御で世界中の海を貨物船が運行する未来の船舶航行システムのヴィジョンの実現するため、ホログラフイック操船システムを開発した。航行中の無人貨物船には様々な故障が生じる。対処して適切な修理を施して運行スケジュールの変更を最小限にすることが要求される。そのためには船舶の状態を各種センサーでモニターし、専門家が待機する制御センンターに情報送信して、状況を表示して専門家が診断する。

 

 

造船業の不振にあっても海運貨物量は増大する一方であり、低コストで迅速な貨物船の運行が要求される。無人貨物船は運送コストの削減と運行の効率化に大きな武器となるが、一方では複雑な船体の状態分析とメンテナンスが不安材料でもある。特に船長の技量が問われる海運業界では熟練が要求されるため自動化は困難と考えられていた。

 

ロールス・ロイス社は高度なIT技術で熟練した人間の操舵技術を遠隔操舵でも実現できると考えている。しかし同社は人間の存在を全て排除しようとしているわけではない。最終的には専門家が適切に判断することを残すことが重要で、それをサポートするために高度なIT技術を用いるとしている。

 

大型船の接岸作業にはこれまで熟練した船長のタグボートの協力が必要であったが、その操舵作業をITで支援することで人間の負担を軽減し安全性を高めることができる。ロールス・ロイス社の運行システム開発はVTTフインランド研究センターとタンピーア大学のマンマシーン・インターフェース研究グループとの共同で行われている。

 

無人貨物船の運行と遠隔操舵はロールス・ロイス社がビッグデータ活用に夜運用効率化の一環として提供されるサービスだが、2001年からの10年間でコンテナ船積載数の伸び率は5.8%で増大の傾向にある。安全で低コストの貨物船運行に遠隔操舵と無人運行が果たす役割は大きい。