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9カ月遅れで太陽光パネルとモーター動力のSolar Impulse 2は世界一周飛行に戻ってきた。ハワイから9番目の飛行ルートであるカリフォルニア周までの飛行に飛び立った。2015年7月にこれまでの最高距離(8,924km)となる日本からハワイまでの飛行を終えたSolar Impulse 2はバッテリーの熱負荷トラブルのためハワイに足止めされていた。
カリフォルニア州からニューヨークに向かい、ヨーロッパを経て出発地であるアブダビに戻る。飛行のリアルタイム映像は特設サイトでみることができる。現在、Solar Impulse 2はカリフォルニア州からフェニックスを経てオクラホマ州タルサ国際空港に着陸している。全米横断の最後となるのはニューヨーク。ドバイまでの航路の78%を達成した現時点で、成功の確率が高くなってきた。
Solar Impulse 2はドイツ銀行、スイスのオメガ社を始め代表的な企業が共同で出資して製作されたもので、太陽光パネルの使用できない夜間飛行が難しく、昼間飛行も天候に左右される。本来はフェニックスからカンサス州を目指すはずだったが悪天候のためオクラホマ州に着陸を余儀なくされた。
電力に恵まれる昼間は高度を上げて抵抗を減らすことができるが、バッテリーに頼る夜間飛行時は低空を低速で飛行せざるを得ない。アブダビを出発したのは2015年の3月なのでもう1年以上が経過した。飛行速度が毎時28マイルなので長時間の連続飛行が続く。そのためパイロットの疲労も大きい。
Solar Impulse 2計画には1億ドル(日本円にして約108億円)の資金が投じられているが、成功すれば世界で初めてのゼロエミッション航空機による世界一周飛行が実現する。これからジェット旅客機にもタービン発電でバッテリーを充電しファンモーターを動力とする電気ファン推進が使われるようになる。電気推進の有効性を示すためにも重要な布石となるのがSolar Impulse 2なのである。次世代のトレンドを決める飛行機なのである。
下にSolar Impulse 2のフライトルートを示す。
Source: ggsoku
EVの世界でもっとも航続距離が長いテスラ社のモデルSの秘密はパナソニックのPC用リチウムイオンバッテリー7,000個を使うためだが、航空機となると重量制限でこの手は使えない。また太陽光パネルも薄膜太陽電池で軽量化をしないと全体を驚異的な重量2.3トン、モデルSに匹敵、に抑えることができない。しかし薄膜太陽電池は効率が悪いため単結晶シリコンを150ミクロン厚という薄膜と呼べる厚みに整形して45kWピークパワーを達成している。技術的にも先端テクノロジーなのである。
太陽光パネル技術からも注目される実験なので、ドバイに再び機体が戻ってきたときは大変な騒ぎになるだろう。