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エボラ出血熱の拡大は治まったかに見えるが一度完治したと思われていた患者が再び発症したり、完治後に神経系の障害を訴えることが報告されている。専門家が恐れていたポストエボラ症候群が、現実となってきた。
リベリアにおけるエボラ出血熱患者の調査
米国の神経専門医がリベリアで調査した結果、エボラウイルスに感染しながら死を免れた患者が、退院後に神経性の疾患に悩まされていることが明らかになった。これらの患者は退院時にエボラウイルスが体内に残っていないことが確かめられていた。
この発表に前後してシェラレオネでエボラ患者の治療にあたっていたスコットランドの看護師がウイルスに感染し、治療を受けたのちに再発を繰り返し、3度目の入院となっていた(The Guardian)。看護師(40歳)は2014年12月に国連の”Save the Children”によりシェラレオネに派遣され現地で治療にあたったが感染し、2015年に1月に1カ月の治療を受けたのちに自宅に戻った。
ポストエボラ症候群
しかし2015年10月にエボラウイルスの影響による髄膜炎を発症し再入院した。この例の他にも生還した患者は疲労感、記憶障害、頭痛、鬱などの神経性障害を訴える例が少なくない。エボラウイルスに感染者に共通した症状の一つに眼球肥大があるが、WHOに従事して感染した治療後に眼球の痛みと視力障害を訴えた患者もいる。この例では眼球からエボラウイルスが検出されたことで、血液中に残っていなくても器官中に巣食うウイルスの実態が明らかになってきた。
医師たちはこの患者にステロイドと実験段階にある抗ウイルス薬を投与した結果、回復に向かっている。しかしエボラウイルスの感染で死を免れた患者の多くが神経性障害などの「ポストエボラ症候群」を発症することが次第に分かってきた。視力障害、関節痛、頭痛、記憶障害などである。
これらがエボラウイルスが完全に体内から駆逐されていないために起こるのかどうかは不明であるが、「ポストエボラ症候群」が存在し、エボラウイルスについての理解が十分でないことは確かである。WHOによるエボラ終息宣言にもかかわらずポストエボラ症候群の脅威はまだ手つかずの状態である。