Credit: Image credit: Laura R. Park and Aris Alexandradinata
KHgX(X=As, Sb, Bi)結晶では。非共型対称性(non-symmorphic symmetry)による表面バンド分散が砂時計型となる(Nature 532, 189 (2016)。プリンストン大学の研究グループはこのような「砂時計フェルミオン」バンドは新しいトポロジカル絶縁体として、電子が表面バンドの上下をしめそれらをつなぐ両端のバンドのみを伝導する新しい概念のトランジスタが誕生する可能性がある。
2000年代中頃から盛んになったトポロジカル絶縁体に関する研究の中で砂時計フェルミオンの存在は理論的に予測されていた。トポロジカル絶縁体ではバルク的に絶縁体でも金属的な表面バンドが伝導性を与える。今回の研究で実証された砂時計フェルミオンもマヨナラ粒子やウエイル・フェルミオンといったエクゾテイック・フェルミオンの仲間である。
砂時計フェルミオン
砂時計フェルミオンは特定の結晶中に実在するのみでそれ自身では存在しないため、エキゾテイック・フェルミオンが存在できる「物質宇宙」と表現される結晶の系統的な探索が始まろうとしている。砂時計フェルミオン物質ではバルクや表面の上下での電子伝導は起こらないが、表面の側面の伝導は可能になる。
今の所、この性質は砂時計型の表面バンドの分散によるもので結晶の対称性に起因する本質的なもの(外部起源ではない)と考えられている。研究グループは空間対象を解析することでこのことを確認したほか、同様な性質を有する場合が230通りあることも見出した。群論的アプローチによるトポロジカル絶縁体の研究は別途発表されている。
砂時計フェルミオン物質を用いればトランジスタが接合を用いずに作成できる可能性がある。実現すれば薄い結晶を成長させるだけで複雑な接合やドーピングの工程が省略できる。デバイス機能を一つの物質の固有の性質で実現できれば半導体産業に与えるインパクトが大きい。