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最近中国で全ての抗生物質が効かない超耐性菌(Superbug)が発見されて以来、世界的に蔓延することが警戒されていた。今度は米国ペンシルバニア州でも超耐性菌を持つ女性患者が報告され、抗生物質治療の終焉を迎える恐れがある。
超耐性菌は49歳の女性患者の尿から検出された。この女性患者は4月に尿道炎の症状でペンシルバニア州の病院を訪れた。新しく発見されたmcr-1と呼ばれるコリスチン耐性遺伝子は全ての市販の抗生物質に耐性である。この抗生物質耐性能力が他の最近に広がることが懸念される。
最後の砦コリスチン
というのもコリスチンが抗生物質の「最後の砦」であり、その耐性菌が登場したことによって、これまでの抗生物質治療法が一気に無力化するからである。CDCによればCREファミリーの耐性菌により患者の50%が死亡する。
中国で豚、加工しない豚肉、人から超耐性菌が発見んされたのは2015年11月であった。その後、欧州でも報告されていたが、米国での報告はこれが初めてとなる。
ICU治療を無力化
感染症の重篤な患者はICUで点滴によって抗生物質治療を受けていたが、超耐性菌に対してはいかなる抗生物質治療も無力である。米国産の豚からも超耐性菌がみつかったことで、中国以外の国でも超耐性菌の家畜への感染が起きていることが明らかになった。
この展開によりCDC、州政府、国防省が協力して超耐性菌の感染ルートを調べることになった。中国の家畜にコリスチンが大量に使用されていることから、細菌が進化して抗生物質耐性能力を身につけたと考えられている。食物連鎖でヒトが持つ細菌にもその能力が伝わった可能性が高い。
超耐性菌の起源
中国のように生肉が他の食品に近いところで販売されている場合には、耐性菌が食品に取り込まれて人間が摂取しやすいという。安い肉を大量に買い付けるファーストフード店は先進国起源で、安い肉を輸出するニーズをつくりだしたということで責任は中国にのみあるわけではない。
細菌が耐性能力を得るには突然変異による場合とプラスミドと呼ばれる自立増殖機能を持つ遺伝子によるものがあるが、後者は別種の細菌に移り耐性能力を複製できるので、次々に耐性菌を増殖していく。
ペンシルバニア州で発見されたコリスチン耐菌(E.coli)はこの遺伝子転写型であるために、警戒が必要となるため、CDCもNIHも対策に巨額の予算をつぎ込むことが決まっている。